Harry Potter 長編(二次)

□変化
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「のうミネルバ。わしには彼女が本当にニンフの血が入っておるのかわからなくなってきたのじゃが…。」
「ええ私もですよアルバス。いたって元気ですし、何より<特徴>すら出ていないではありませんか。」
「わしらが心配しすぎだったのかもしれんな。ジョアンナにもそう伝えておこう…君の娘は大丈夫だ、心配せずともまっすぐに育つじゃろうとな。」
「少しは心配症も良くなるといいのですがね。こんなに年月が経ってからまるで呪いのようなことが起こるはずありませんのに。」
「そうじゃのう…。そういえば、この間レモンキャンディーなるものをキングズリーから貰ったのじゃが君も食べるかね?」
「結構です。」
「ふむ。では糖蜜タルトも?」
「ええ結構。強いて言うなら…私はジンジャークッキーが頂きたいわ。」




その日は朝から体調が優れずにいた。十月も終わりにさしかかり、秋から冬へと移行していくとき。体調の優れない生徒は私以外にも数人いた。

「あらまあ、あなたもですか。じゃあこれを飲んで少しゆっくりしていなさいな。」

校医のマダム・ポンフリーはてきぱきとした様子でベッドと元気爆発薬を用意してくれた。薬を飲むと身体中から力がみなぎってくる気がする……はずだったし、すぐに授業に戻れるはずだった。

「調子は?どうかしら。」

薬を飲んだまま微動だにしない私を見て心配したマダム・ポンフリーは私の顔を覗きこむ。

「あの、全然効かないです。まだ寒気はするし気分もよくなりません…。」

「変ですね。大抵は良くなるはずなのに。」

薬を確かめてみる。でも特別変わったところはない。

「セブルスを呼んでくるわね。もしかしたらセブルスの魔法薬の方が効くかもしれないし…。」

安静にして待ってなさい、と言ったマダム・ポンフリーは少し急いだ様子でスネイプ教授を呼びにいった。別に呼ばなくてもいいのに…と内心思いつつ寝返りをうつ。風邪ではないのかなぁ…厄介な病気だったらどうしよう。嫌な予感が脳裏をよぎる。



「Ms.ガーディナー……Ms.ガーディナー!!」

耳元で低い声が響いた。

「我輩を呼んでおいて眠るとはいい度胸をしていますな?」

いつの間にか寝てしまっていたらしい。上から覗きこむようにこちらを見てくるスネイプ教授にびっくりした私は思わず大声で叫んでしまった。考えてみて欲しい。目を開けた瞬間、自分の視界にしかめっ面をした男の顔があるのだ…驚かない方がおかしい。

「スネイプ教授…は、私に、何の御用でしょうか?」

心臓がバクバクと脈打っている。

「………君の体調が悪く薬が効かないので、我輩の薬を与えたら治るのではないかたうマダム・ポンフリーの考えで我輩はここに連れてこられたのですぞ。そうしたら当の本人は元気そうではないか。せっかく来てやったのに時間の無駄でしたな。」

「セブルス…そんなこと言わないでやって。」

マダム・ポンフリーが諭すように言う。
「仕方がない…それで?彼女はどのような症状なのですかな。」

「倦怠感と寒気…気分がすごく優れないんです。」

スネイプ教授はいたって真面目に私の症状を聞いてくれた。まるでマグルのお医者さんのようである。それから自分の研究室から持ってきたと思われる薬を数種類混ぜ合わせ、私のベッドへと戻ってきた。

「元気爆発薬は効かなかったと……ではこちらはどうかね。少し飲みやすいように調合しなおしてあるが効き目は変わらんはずだ。」

薄緑色の液体がコップに注がれる。見た目は普通に美味しそうだ。匂いも悪くない。

「あ、じゃあいただきます…。」

コップの端を唇にあて、一気に飲む。想像以上だった。まるでフライパンについたコゲをたくさん集めて煮詰めた上に薬草独特のえぐみと苦味を合わせてねっとりとしたクリームにしたみたいな感じ。舌に残る嫌な味はもう一生忘れられないと思う。思わず吐き出しそうになるのを必死にこらえる。これで飲みやすくしたつもりなの!!?

「かぼちゃジュースとでも思ったかね?」

私が顔をしかめているのを見ていたらしいスネイプ教授は呆れた様子だ。

「………。」

あまりの不味さに声も出ない私は涙目になりながら教授を見上げる。教授はその様子をじっと見た後、少し慌てたように薬品を片付けはじめた。

「……安静にして早く治しなさい。」

ようやく片付けが終わった教授は私にそれだけ言うとそそくさと医務室から出ていった。
私は言われた通りベッドで安静にしていたが、不思議なことにあの薬を飲んでから 体調はすっかりと元に戻ったのだった。
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