居場所
□第4夜
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それから幾日が経ったある日。
父上はその女子を私たちの嫁候補として、煌帝国に身を寄せるよう命じた。
それも我々皇子と同格の身分。
なぜ見ず知らずのよそ者にそこまで肩入れするのか。
その疑問はあのときの帝都内に居る者全員が思っていることでした。
事実、私たちもどう接していいものかわからないまま、対面をすることとなった。
『なにかあって泣かれれば厄介だな。』
『そうですね、対面の席には私たち3人だけですし・・・。』
あのときの名無しさんはいつも泣いてばかりだと噂されていた。
しかも一度泣けば数時間泣き止まないらしい。
子供だけで話をするよう父上に命ぜられ、侍女抜きでの対面。
そんなところで泣かれれば、人を泣き止ませたことのない私たちはどうしたらいいのかわかない状態になるに決まっている。
私たちは気が進まないまま、用意された部屋に案内され、中に入る。
『ここは・・・あの者が最初に運ばれた部屋ではないか。』
『そのまま使うよう命ぜられたのでしょうか・・・それより、本人はどこに?』
部屋に入った私たちは、その女子の姿をとらえることができなかった。
すると、ベッドの掛布団が微かに動いているのに気付いた。
どうやら、潜って隠れているらしい。
『・・・そこか。』
『ちょ、お待ちください!!』
『・・・なんだ紅明。』
『無理矢理出てこさせようとすると泣いてしまう可能性があります!』
『ならばどうしろというのだ、このままでは対面どころか話もできまい。』