居場所
□第4夜
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『改めて自己紹介ですね、練紅明です。よろしくお願いします。』
『練紅炎だ。』
『名無しさん・・・。』
このとき、初めて名前を知ることができました。
実は、今まで誰も名前を知らなかったのです。
何を聞いても黙るか泣くかだったそうです。
だから私たちが初めて名前を知ることができた、ということが嬉しかったんです。
『名無しさん・・・というんですね。素敵な名前です。』
『名無しさん、歳はいくつだ?』
『5歳・・・こーえんとこーめーは?』
『・・・フッ』
『・・・クス。』
『・・・?なんで笑ってるの?』
『なんでもありません、私は10歳ですよ。』
『俺は12だ。』
名前で呼んでくれたことが嬉しかった。
さっきまで全然話さなかったのが嘘みたいに。
きっと、私たちに心を開いてくれたって思っていいんですよね?
それから名無しさんは、私たちを介して煌帝国の人たちと少しずつ解け合っていきました。
そこから見えた本当の名無しさんの姿。
人のためになんでもできて、優しい。
泣き虫だけど、笑顔が輝いている。
ここに来たときの印象はもう誰も抱いていないでしょう。
そして名無しさんは、私たちと共に成長していったんです。