居場所
□第5夜
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「紅明が部屋にいないだと?」
「・・・は、はい。今他の侍女たちや紅覇様もお捜しになってくださっております。」
侍女がそう告げる。
いつも通り紅明の部屋の前で侍女たちが声をかけたそうだが、これもいつも通り返事がない。
もう日常的になっていたものだが、部屋にいないとなるとまた徹夜をして資料庫に籠っているはず。
紅明がいつどこで寝ているかなど、すぐに予想がつく。
なぜここまで大事になったか。
その理由は紅明の部屋の前を通りかかった紅覇が、これもまたいつも通りに勝手に部屋を開けて入ると、紅明の姿がなかったからだという。
そこから紅明のいそうな場所を捜しているが、一向に見つからず、観念して俺に相談してきたらしい。
「炎兄〜・・・ほんとに明兄いないよ〜・・・。」
侍女を下がらせると同時に、弟の紅覇が入ってくる。
色々回ったのか、随分と疲れた表情だ。
「資料庫は?庭は?湯殿は?」
「ぜぇんぶ捜した!こんだけ捜していないこと今まであった〜?」
「ないだろうな。」
「だよね〜、名無しさん姉にも協力してもらおうって思ってたんだけど、まだ寝てるって侍女たちに言われたんだよねぇ。」
「・・・なるほどな。」
そういって立ち上がり、部屋を出ようとする。
「え、炎兄どこ行くの?」
「紅覇、侍女達にもう捜す必要はないと伝えろ。」
「あ、うん。麗々頼んだよ〜。」
「承知いたしました。」
紅覇は近くにいた自分の従者にそう告げると、俺のあとをついてくる。