殿の寝室
□不治の病(惇×操)※
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ふいに意識が覚め、右目を少し開く。
膠で張り付けたかのような瞼を、剥がすように持ち上げる。
夜明け前なのだろう。
周囲はまだ青暗い。
少し顔を左に向けると、夏侯惇の穏やかな寝顔が見えた。
精悍な顔立ちに、焼けた肌色と整えられた髭がよく似合う。
佳い男だな、と素直に思った。
背も高く、体格もいい。
落ち着いた声も素敵だ。
自分がなりたいと思う容姿だ。
そこまで考え、曹操はため息をついた。
「ん…もう朝か…?」
眉間に皺を寄せ、夏侯惇が身じろぐ。
「まだ夜明け前だ。起こしてしまったか」
「ん……」
夏侯惇は鼻から長く息を吐くと、曹操を抱き寄せた。
唇が曹操のおでこに当たると、そのまま口づける。
「孟徳……」
「ん?」
「……」
顔をあげ聞き返すと、夏侯惇は再び眠りの中へ落ちていった。
「こやつは……」
曹操は思わず苦笑した。
夏侯惇の胸に額を付けると、夏侯惇の肌が香る。
穏やかな呼吸と鼓動も聞こえる。
曹操は瞳を閉じ、夏侯惇を思った……
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幼い頃、曹操の後ろをいつもついて来た。
青年となり、互いに恋して、幼なじみ以上の関係となった。