殿の寝室
□A Standard Day(惇×操)
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夏侯惇が武器を変えたと云う。
左目を失って以来、夏侯惇は色々と武器について試行錯誤しているのだろう。
今まで使い慣れていた麒麟牙をしまい込み、柄の長い『砕棒』という武器を使っているらしい。
「……それで、砕棒を見たいが為に、こっそり仕事を抜け出したのか」
半ば飽きれたように、夏侯惇は曹操に言った。
「そう厭な顔をするな」
曹操は夏侯惇の武器を見ながら言う。
それは夏侯惇の背丈よりも長く、先には鋼鉄の棘が付いてある。
無駄な装飾もなく、武骨で、見るからに重そうだ。
「持ってみるか?」
「うむ」
夏侯惇は、柄を曹操の前に差し出した。
それを曹操は両手で受け取った。
「むっ!?」
重い。
棒先は地面についたままなので、重量は半分もない。
だが重い。
ゆっくりと、慎重に持ち上げる。
なんとか棒先が持ち上がったが、重さで腕が震える。
と、横から夏侯惇が曹操の腕をとり、身体を支えた。
「夏侯惇……」
言いかけ振り向くと、夏侯惇が笑顔でこちらを見つめていた。
その笑顔のまま、顔が近づく。
「んぬっ!?」
顔を曹操に近づけた途端、夏侯惇の腕に棒の重みがかかった。