殿の寝室
□A Standard Day(惇×操)
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夏侯惇は思わず前のめる。
「孟徳っ?」
曹操を見ると、彼は真面目な顔で正面を向いている。
視線の先に、兵卒らがいた。
皆、訓練の手を休め、何人かはこちらを見てニヤついている。
ここが訓練所であったことを思い出し、夏侯惇は顔を赤くした。
「お前等!誰が休めと言った!?」
夏侯惇は大声で怒鳴った。
瞬間、兵達は一斉に背筋を伸ばす。
「全員、訓練所五十周走れ!!」
兵達は慌てて列を作り、走り出した。
「夏侯惇、おぬしもだ」
「何?」
夏侯惇が振り向くと、曹操が眉間に皺を寄せている。
「先程、儂に何かしようとしたであろう?」
「いや……それは……」
曹操が砕棒を持って動けなくなった時、夏侯惇は曹操を支えながら、口付けようとしたのだ。
人前では、常に覇王としての威厳を保とうとしている曹操。
兵達の前で夏侯惇といちゃつくなど、人の上に立つ者として示しがつかない。
「だから、おぬしも走ってこい」
「……やれやれ」
夏侯惇は、頭を掻きながら、走り出した。
兵達に混ざり走る夏侯惇を見て、苦笑する曹操。
「ところで、殿」
ふいに背後から声をかけられ、曹操の両肩がビクッと震えた。