春の青

□=第二章= 薫る、初夏
1ページ/5ページ


   〓第2章〓


――いつからだろう?


気が付くと、いつも視線が彼を追い駆けた。

振り向いた彼の笑顔に心が踊った。
うつ向いた彼の泣き顔に息が詰まった。


――いつからだろう?


この想いが、只の仁義や友情でないと気付いたのは……


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


夏侯家の敷地内の北にある小さな離れ。

そこに夏侯惇は居た。

彼は半年前、とある少年と言い争い、殺害してしまったのだ。
殺人の罪に問われた夏侯惇は、逮捕されたものの、1ヵ月後に釈放された。

しかし、事の重大さから、夏侯一族は、彼に自宅謹慎の処罰を与えたのだ。


卓の上に広げられた竹簡を、夏侯惇は長いこと見ていた。

竹簡に書かれているのは『史記』である。

その歴史書の一文から、夏侯惇は目が離せないでいた。


その内容とは――
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ