変色果実
□じゅう竜宮島放送局
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ここは竜宮島放送局…ローカルではあるが、島で一番視聴率の高いTV局である。その一室では激しい攻防が繰り広げられていた。
「嫌だっ絶対にいーやーだっ」
「嫌じゃない、コレも仕事なんだぞっ」
室内で真ん中に置かれたテーブル越しに言い争っているのは一騎と総士…総士は何やらアルヴィスの制服(しかも♀Ver)を持っている。
「こんなのが仕事なワケあるかっ嫌がらせとしか思えないぞ」
「嫌がらせでするか…アルヴィスの人員を増やすという、れっきとした仕事だ真壁司令からの命令でもあるんだからな」
「父さんから…?」
(本当かよ…自分の息子に何させようとしてんだ)
自分の父親が言った事だと聞いて、一騎が固まったのを総士が気付かないワケもなく…テーブルを一瞬のうちに乗り越え、一騎を捕まえた。
「わわっちょ…離せよ、総士っ」
「離したら逃げるだろう?」
(当たり前だろっ)
と思い切り叫んでやりたかったが、この状況では下手な事を言うとどんな目に遭わされるか判らない(いや、もう既に手遅れな気もするが…)
少し抵抗が緩んだのを見て、総士はにこやかに笑いながらアルヴィスの制服(しつこいようだが♀Ver)を突き付けた…
「さ、これを着てもらうからな」
「―っ///着れるわけないだろ」
♂Verならまだいいが、♀Verはミニスカートなのだ。しかもマイクロミニと言っても過言ではない…改めてそれを見て、一騎は抵抗を強める。
「はぁ…そんなに嫌?」
「当たり前だっ」
と呆れた表情の総士に向かって今度は怒鳴ってやった。ついでに睨んでたりもするのだが…涙で潤んだ目で睨まれても怯むどころか、さっきまでの攻防で上気した頬の赤みと相まって、総士の過虐心を煽るだけである。
「だ…大体俺が着たって増えるものじゃないだろ?遠見とかが居るじゃないか」
「いや、絶対に増える」
「何でそう言い切れるんだよ…」
言い切った総士の目が真剣なだけに恐いものがあった。
(男の俺がこんなの着たって喜ぶヤツなんて…居たか、目の前に)
悲しい事に目の前の幼なじみならきっと、絶対、天地が引っ繰り返っても喜ぶに違いない…だって現にその端整な顔に似合わぬ相好で詰め寄ってるんだから…
仕事というのは建前で、本当はただの趣味かな…と一騎は遣る瀬ない気持ちになった。