献上果実

□特等席†完
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―ピンポーンッ♪





小気味よく客の来訪を告げる音が部屋でTVを観ながら寛いでいたキラの所まで響く。
その音を聞いたキラは来訪者を迎えるために立ち上がり、パタパタとスリッパを鳴らせて玄関へと向かった。





―ーー‐ー‐-



「誰だろ?」


誰が来たのか思いつかないまま外界への扉を開く。
すると、ここ最近見慣れた色〜黒と紅〜が目に飛び込んできた。ソレと共にこれまた最近聞き慣れた声。


「キラさん、今暇ですか?」


そう言ってキラの目の前に立っていたのは短な黒髪を風に任せ、印象的な紅い目を細めて満面の笑みを浮かべているシンであった。


「暇といえば暇だけど…どうかしたの?」


意外にも礼儀正しい彼が予告も無しに家に来たのはこれが初めてだなぁ…と頭の片隅で思いながらも返事をする。


「よかったぁ…じゃあ、これから出掛けませんか?」

「これから…?」

「はい!…ダメですか?」


しゅん、とはた目からでも判るくらいに落ち込むシン。もし彼に耳や尻尾があったなら垂れていた事だろう。
キラはその様子を見て慌てて返事をした。


「あ、そんなことないよ!っと…着替えてくるから待ってて?」

「っはい!」


その返事を聞くや否や、ぱあぁっとシンは零れんばかりの笑みを浮かべた。
心なしかピンと立った耳とグルグル回る尻尾があるように見えるシンを微笑ましく見てから、キラは準備のために部屋に入っていった。
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