sHorT
□君の声
5ページ/7ページ
『仁王くんは、好きな人に好きな人がいても思いを伝えれる?』
『…伝えるじゃろーな、もう、溢れそうじゃと思ったら』
普段、不敵な笑の君は無邪気に笑った。
『私、伝えてみようかな』
『…がんばりんしゃい』
その言葉で、強くなれた気がした。
深呼吸して、言葉をつなぐ。
『聞いてくれる?』
『なんじゃ』
『私ね、彼の声が好きなの。心をそのまま表してる言葉を発する声が』
君は何も答えず、ただ頷いてくれた。
『彼のね、告白されてる現場をたまたま聞いてしまってね。逃げていった女の子に言った言葉を聞いて好きになっちゃった』
ひどい女、と思われてもいい。
ありのままを伝えたい。
『酷いタイミングだとは思ったの。でもその言葉をもらえるなら、好きな人がいても構わないと思った』
君はまた頷いてくれた。
『でもね、誰だか知って絶望しちゃったの。あぁ、やっぱり私には向かないのねって』
『それはおまんが決める事じゃなかろーて』
『そうなんだけどね、あまりにも天上の人で怖気付いちゃった。でも、私やっぱり伝えたくなった』
『…そうか』
なぜか君は悲しそうに笑った。
『言っても、いいと思う?』
『…その前に、ちょっと俺の話もききんしゃい』
え?と、思ったときには君の腕のなかにいた。