ひよまる's book!!!
□今、冬の星に向かう__。U
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「ケイ…ッ!!
ここにいたんだね…っ」
「……お前か」
冬樹がケイを追い、屋上まで駆け上がって来る。冬樹は息を切らせながら、その長い前髪を掻きあげた。
この学校の屋上には、ひとつコンクリートの倉庫がある。その倉庫の鍵は壊れていて、しまってある物も少ない。職員用の机が二つと、体育の大きなマット、そして椅子がひとつ。東側と西側に面している小窓からは、常に日の光が差し込んでくるため、いつでも明るい空間になっている。
その場所は、ケイの隠れ家の様な存在になっていた。
マットの上で仰向けになっているケイに、冬樹が話しかける。
「なんかごめんね…
こっちが誘ったのに、夏芽は相変わらずでさ」
「……なんでお前が謝んだよ」
ケイが冬樹のことを睨んだ。
冬樹は少し困った顔をして、言葉を続ける。
「その…軽音部代表、として?
ていうか、私が誘わなかったらこんなこと起きなかったし…」
「………」
ケイは何も応えない。
真っ直ぐ天井を見つめ、じっとしているだけだ。
沈黙がながれる。
おもむろに冬樹がポツリと呟いた。
「……なんで、なの」
ケイは視線だけを冬樹の方へ向ける。
「前から思ってたんだけどさ。
ていうか中学の時から思ってたんだけどさ」
「…………。」
「……なんで、さ。なんでケイは変わっちゃったの??」
冬樹の問いかけに、ケイの眉がピクリと動いた。