ひよまる's book!!!
□今、冬の星に向かう__。
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二時間目の学級活動の授業も終わり、ケイのいる2−4に王子様がやってきた。
王子様というのは2−3の橘冬樹のあだ名で、イケメン、イケボ、女子に優しく長身の為、中学の頃からそう呼ばれているらしい。
「ケイって、いるー?」
冬樹が扉から顔をいれると、女子の黄色い声が一斉にあがる。
冬樹はそんな声に優しく答えつつ、ケイのもとまで歩み寄った。
「…何か用かよ」
「うん」
いつもケイは、冬樹に冷たくあたる。
しかしそれはいつものことなので、冬樹は爽やかスマイルのまま言葉を続ける。
「ケイ、お弁当、持ってきた?」
「…………ぅぐ」
どうやら忘れたらしい。
この学校にも購買はあるが、今日は丁度やっていない為、お弁当の持ち込みがお知らせされていたのだ。
「べっ、別に忘れてねーから?」
「え、そうなの? よかったぁ…
じゃあ、あるんだね」
「…忘れたんじゃなくて…わざと持って来なかったんだよっ!」
「ツンデレか」
冬樹は呆れたように笑い、赤い布で包んである物を机に置いた。
「ほら。お弁当」
「…別にいらねーし」
「……ふーん。
せっかくいかすみスパゲッティ入れたのになぁ?」
「やっぱいる」←
ケイは赤い包みを抱きかかえ、リュックにしっかりと収納する。
「…で? 用はなんだよ」
「えー? お弁当」
「だけじゃねーだろ」
「んー。バレた?」
冬樹はヘヘッと笑い、制服の袖をまくった。
すかさず女子の黄色い声があがる。
「今日の放課後、来てよ。軽音部」
「…………。」
冬樹は軽音部に属していて、ボーカルをつとめている。
実は幼馴染であるケイと、冬樹は軽音をしたいらしい。
「……やだね。興味ないし」
「そう言わずにさぁ… ねっ?
お弁当のお礼、欲しいんだけどな」
こうしててもラチがあかないと思ったのか、考えといてね?、と念を押して冬樹は教室を出て行った。
「………仕方ねぇな」
赤い包みの入ったリュックを眺めながら、ケイは懐かしそうに笑った。