ひよまる's book!!!
□今、冬の星に向かう__。U
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「なんでケイは変わっちゃったの??」
「…変わってねーよ」
「変わったじゃんっ!!!」
普段は声を荒げない冬樹が、目にうっすらと涙を浮かべながら、激昂した。これにはケイも驚いたように体を起こす。
「私達は、小学校のときまでは、仲良かった。ケイも、そんな態度とってなかった。
なのにケイは変わっちゃったの。中学入って少ししたら、いつも私にキツくあたって…」
冬樹の弱々しい声が、コンクリートに響くことなく吸い込まれていく。
「平気な振りしてたけど、ほんとは、本当はっ……辛かった…ッ」
二つの瞳から零れ落ちる大粒の涙を、冬樹は拭わない。涙とともに今まで溜め込んできた悔しさ、悲しみ、寂しさ、辛さが、滝のように溢れた。
ふとケイが、冬樹を睨みつける。
そして、喉に留めていた言葉を、ゆっくりと絞り出した。
「……それは、
お前が…変わったからだろ」
「………え??」
ケイの意外な発言に冬樹は目を細める。
「私が…変わった…?」
「変わったっ!
お前が先に変わったんだろ!」
今にも噛みつきそうな勢いで、ケイは鋭い犬歯を噛みしめた。歯の軋む音が、する。
「お前だって小学校のときは、ただの女の子だった。ピンクとかフリフリとか、好きだって言ってたよなぁ?
でも中学入って、たまたまショートカットにしたときから、周りの女子がはやしたてた。お前を恰好いいって」
少し寂しそうに笑いながら、ケイは続けた。
「…なんで流されんだよ。
あたしは、自分の好きな服着て、はしゃいでる冬樹と一緒にいるのが楽しかったんだよ!
いくら周りに褒められたからって…
…お前は、それでいいのかよ」
すると_____
ギュ…ッ
冬樹は、涙目になっているケイを、ゆっくりと抱き締めた。
「……ケイ、ありがとう」
「___え?」
「ケイは、私のこと、心配してくれてたんだ。いつも私のこと、思っててくれたんだね」
「………ッ!!!」
ケイは、口をパクパクさせながら何か言おうとしたが、言葉にならない。
枯れた頬を、幾筋もの涙が伝っていく。
「でもケイ…。私なら大丈夫だよ?
私、今の自分、嫌いじゃないよ」
冬樹のアルトな声が、先ほどとは違ってコンクリートに響く。その声は、ケイの心にも心地よく響いていた。
「だからさ…
もうケイが気にしなくて、いいんだよ」
「……おぅ」
プツ__とケイの中の何かが切れ、ケイの両目からは大粒の水滴がとめどなく溢れる。
この日を境に、長い間二人の絆を縛っていた呪縛は簡単にとけ、二人の間には、より強固であたたかい絆が芽生えた。