写真館
□第3夜
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「……あ?」
扉をあけた瞬間、カウンターに懐かしい背中があった。
反射的にこっちを向いたその少女の顔はずっと、追い求めていた────。
『やだやだっ!来ないでっ!』
「ゆかりちゃん!落ち着きや!!」
「ダメだ、草薙さん!
全然聞こえてないっ」
俺の目の前で繰り広げられる、光景。
それはいつかまだ幼かった頃見た光景と類似していた。
「……っ、草薙さん。下がってください。
俺がやります」
「なっ、伏見!?どういうこっちゃ!!
ゆかりちゃんは、傷つくかもしれへんけどお前の事見て怖がってんねん!!
お前が近付いたらどないなると……」
「知らないっすよ。ただ、誰かが力ずくでも抑えないと、こいつ自身が傷つくだけです」
俺───伏見猿比古の言葉を聞き、草薙が黙る。
必死に逃げようとして店内の椅子やソファー、机に体のあちこちをぶつけ出血しているのを見て、何も言えないのだろう。
その隙に伏見はゆかりへと迫る。
ゆかりが恐怖に駆られながらも必死に逃げた距離をたったの二歩で詰める。
『や……っ。来ないで……っ。
ごめんなさいごめんなさい……っ』
「ゆかり、誰と勘違いしてる。
俺はゆかりの怖がってるやつじゃない。
静かにしねえと、今度こそ本当にあいつが来るぞ」
『あっ……?え、あ……っ。
……っ、おにい、ちゃん……?』
ゆかりの頬を両手で優しく包み込み目を合わせ声を耳ではなく心へ響かせる。
昔から、ずっと幼い頃から使っていた技。
伏見の声が届いたのかだんだんと落ち着いていくゆかり。
焦点の定まらなかった瞳が伏見を映す。
「お帰り、ゆかり」