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□第2夜
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ぼんやりとする意識で周りの状況を確認しようとすると、食欲をそそるいい匂いがした。

その匂いにつられて目を開けると、色素の薄い茶髪の青年が覗き込んでいて、私の開いた目とばっちり目が合った。

突然のことに驚いているとその青年は私に微笑んでから顔をあげてから誰かに声をかける。


「草薙さーん。この子起きたよー」

「お、やっとお姫様のお目覚めかいな。
………で、お嬢ちゃん、気分はどや?よぅなったか?」


サングラスをかけた京都弁の青年がバーのようなお店のソファーに横になっている私の横にしゃがみ目線を合わせながら問い掛けてきた。


『だ、大丈夫、です………』

「そか。なら良かったわ。お嬢ちゃんがこのバーの前で倒れてるの見つけた時は驚いたでー。
お嬢ちゃん、名前はなんていうん?」

『私は、小野ゆかり、です』

「ゆかりちゃんか。ええ名前やな。
あ、そうや、今からアンナっちゅう子と尊っちゅういかつい男が朝ご飯食べるんやけど、ゆかりも一緒に食べるか?」


あいつ以外の人と会うのなんて一年に1回他人を信じることが出来ないゆかりは返事につまってしまう。

そんなゆかりを見た最初にゆかりの顔を覗き込んだ青年が


「まぁ、カウンターまでおいでよ。
お腹すいてるでしょ?」


と笑顔でゆかりを誘う。

するとサングラスの青年が、そうやな、と言い、ゆかりの背に手を当ててゆっくりとソファーから起こす。



「さ、こっちや。
今アンナと尊呼んでくるから、そこ座って待っときー」

『は、はい……』


ゆかりの返事を聞くと青年はバーカウンターの横にある階段を登っていく。

のこされたゆかりがそわそわと周りを見回していると、階段のほうから足音が聞こえてくる。

タタタ……と軽い足音。トットッ、と規則正しい足音。そしてゴンゴンと重めの足音。

その三音が響き合い、ひとつのメロディーを創り出しているようだ。

………そこに混ざるおかんのようなセリフがなければ。


「こーら、アンナ!階段で走ると危ないっていつも言うてるやろー」

「……へいき」

「ったく……。転ぶんやないでー?
ほら、尊も!早よせぇ。もう朝ご飯出来てるで」

「おう……」


階段の方から聞こえる声がはっきりとしたものになったとき、銀髪の少女の姿が見えた。

赤を基調としたロリータのような服、ドレスと言っても差し支えがないような服を着た少女だ。

その少女にじっと見つめられたゆかりは体の奥まで覗かれているような感覚になり、もぞもぞと身動きをする。


『あ、あの………?』

「……辛かったんだね」

『─────っ!!?
あ、あの────!?』

「こら、アンナ!初めての人、勝手に覗いたらあかんやろ
ゆかりちゃんも困惑してはるやろ」

「この子も、ストレインだからいいかと、思って」

「なんやて!?
ゆかりちゃん、自分ストレインなんか!?」


突然聞きなれない単語が飛び出してきてゆかりは目を白黒させる。
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