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□第2夜
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『す、すと……?
な、何ですか、それ?というか、その少女は私の何を!?
それに、まず、貴方達は、その、誰なんですか!?』


ゆかりの慌てぶりに逆に周囲が静まる。
物音一つしない、耳に痛い沈黙の中、青年の空咳が響く。


「あー。俺としたことが。すまん、自己紹介がまだやったな。
俺は草薙出雲や。このBar HOMRAのマスターやっとるんや」


サングラスをかけた青年―――草薙出雲がゆかりに右手を差し出す。
困惑した表情を浮かべるゆかりに草薙が笑顔で言う 握手しよや、と。
その言葉を聞き、ゆかりは緊張気味に草薙と握手をする。
上下に何度か手を振ると草薙は手を離し、周囲の人の紹介を始める。

「まず、この赤毛のいかついのが尊、周防尊や。
……ほら尊、挨拶くらいせぇ」


自分の紹介だというのに我関せず、といった雰囲気を醸し出す周防に草薙が少し苦笑しながら挨拶するように言う。
草薙の言い分を聞き入れたのか周防が口を開き挨拶をする。


「周防尊だ」


…………一言だけ。


『よ、よろしくお願いします……』


赤毛の男―――周防尊のぶっきらぼうな挨拶にたどたどしく返事をするゆかりを見て金に近い茶髪の青年が口を挟む。


「キングー?少女相手にその態度はダメだよ〜?
……えぇと、ゆかりちゃん、だっけ?俺は十束多々良。よろしくね。
で、そこの赤いビー玉越しにゆかりちゃんを見つめてるのが櫛名アンナ。
今まではアンナが最年少だったんだけど……。ゆかりちゃんは何歳?」

『じゅ、16です』

「私より、年上」

「あれ、そうなんだ。ごめんごめん」


十束の登場で紹介役を奪われた草薙は、周防、アンナ、十束、そしてゆかりの朝ごはんをカウンターに並べる。


「さっ、みんな冷めへんうちに食べてや――ってアンナはもう食べてるな」


いつの間にカウンターチェアに腰掛けたのか、アンナは片手にスプーンを持ち、もぐもぐと小さな口を一生懸命に動かし、朝ごはんとして出されたオムレツを頬張る。


「イズモのご飯、美味しい」

「なんや、嬉しいこと言ってくれるやないか。
…………ゆかりちゃん?食べられへん?あ、オムレツ苦手やったりするん?」
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