盲目なシナリオ
□第01章【月夜】
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ーーーひどく懐かしい昔の夢を見た気がする。今日は久々に寝付きが悪く、まだ陽が登らない微妙な刻に起きてしまった。サラリと垂れた髪がやけに顔に張り付く。まさかと思いながら掌を額に付けると、指先が濡れ水滴が流れ落ちていった
(…汗を、かくほどの、イヤな夢なのだろうか)
もし仮にそうだとしても、もうその夢の内容など覚えてなどなく、遥か昔に感じた、じんわりと広がるような温かさだけが胸に残った。
それがなんだか居ても立っても居られなくなり、少々早いが同室の珍しく隣で寝ている文次郎を起こさぬよう襖を開けて井戸に向かった
(気持ち悪い感情)