彼女の愛で方

□Lesson9
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「二度とこうされたくなかったらさっさとマネージャーを辞める事ね!」


『…っ…』


「フシュゥゥ…煩えな」


クラスで集めたプリントを職員室へ持っていこうと海堂が廊下を歩いていると階段側で騒ぎが聞こえてきたので海堂は眉間に皺を寄せながらそちらに向かい顔を覗かせた。


「大体不二君のいとこって事を利用してテニス部の皆に近付くなんて卑怯だと思わないの?!」


『わっ…私は別にそんなつもりは…』


「おい!何やってんだお前ら」


「か…海堂君!?」


海堂は廊下に座り込んでしまっている名無しの手を引き立ち上がらせ怪我がない事を確認した後女子生徒達を睨み付けた。


「よってたかってイジメなんてみっともねぇ事してんじゃねぇ!」


「ごっ…ごめんなさい!!」


女子生徒達は海堂に見られたという事に焦りながらその場を去って行ってしまい海堂は舌打ちを吐いた後もう一度名無しを見下ろした。


「…怪我はねぇか」


『あ…う、うん。大丈夫…です』


「あいつらマネージャーがどうとか言ってたがまさかお前度々こういう事されてんじゃねぇだろうな」


『さっ…されてないよ。だだ…大丈夫だから』


やけに焦ったように、そして目を泳がせる名無しに海堂は溜め息を吐き出した。


「おい」


『はは…はい!』


「お前嘘吐いてんだろ」


『なっ…なんで?!』


「目が泳いでんぞ」


『う…嘘!』


名無しが目を隠そうと両手を顔に近付けた所で海堂に深い溜め息を吐かれてしまいはっとしたように名無しはもう一度海堂を恐る恐る見上げた。


「…顔貸せ名無しさん」


『わわっ…私…海堂君に呼び出されるような覚えは…』


「馬鹿違う。さっきは気付かなかったが膝擦りむいてるみてぇだから保健室に行くぞ」


『こ…この位なら大丈夫だよ。そっ…それに海堂君プリントが…』


「フシュゥゥ…つべこべ言わず顔を貸せと言ってんだよ」


『はは…はい…わっ…分かったからそんなに怖い顔しないで…』


酷く怯える名無しに海堂は何度目か分からない溜め息を吐き出し名無しに目配せをした後背を向け廊下を歩き出した。





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