彼女の愛で方
□Lesson14
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「名無しちゃんお疲れ!」
『わっ…あ…清純君?』
「ん〜?それなに?」
『で…データノート』
練習後の自由時間データノートを纏めようと談話室に居た所どう探し当てたのか千石がにっこりと笑いながら後ろからそう話し掛けてきたので名無しは驚きながらもそう小さな声で呟いた。
「データノート?あはは、乾君みたいだね」
『う、うん。乾先輩を見習って私もマネージャーとしてこういうの書いてもっと皆の役に立てたらなぁと思って』
「へえ、真面目だなぁ名無しちゃんは。でもそういう所も好きだよ俺は」
『えっ』
途端に顔を真っ赤に染め上げた名無しに気を良くした千石は名無しの髪の毛に手を伸ばした。
『あ…あの…?』
「髪の毛縛ってるのも可愛くていいんだけど俺的にはやっぱり下ろしてる方が可愛いと思うな」
『え…そ…そうかな?でも私髪の毛バサバサだし…』
「え〜?これのどこがバサバサなの。すっごいさらさらじゃん」
『きっ…清純君!ちち…近いっ』
「近くていいんだよ。近くなきゃ出来ない事もあるでしょ?」
悪戯な笑みを浮かべながら手を髪の毛から頬に移した千石はゆっくりと名無しに顔を近付けていった。
「今日俺がどれ程君にこうしたかったか分かる?それに朝言ったでしょ。こういう事は後で二人きりの時にしようねって」
『そそっ…そんな事言われてもこま…困るよ』
「俺は困らないからいいの」
今度は逃げられないように顎を捉えられてしまった名無しは眼前まで迫る千石の顔を見ていられなくなってしまいぎゅっと目を瞑った。
「うっわ千石!お前手ぇ早過ぎんだろいっ」
「あれ、丸井君じゃん」
『ままっ…丸井さん?!』
「つうかお前んとこの顧問がお前の事探してたぜい」
「えっ、マジで?ちぇ〜…いいとこだったのに残念」
千石は唇を尖らせながら席を立ち名無しの頭を撫で、続きは後でねとウィンクしたあと談話室を出ていってしまいほっと胸を撫で下ろす名無しを見つめながら丸井は呆れたような溜め息を吐き出した。
「お前な〜…もうちょっと抵抗するとか出来ねえのかよい」
『ごっ…ごめんなさい』
「たまたま俺が通りかかったから良かったものをこれで誰も来なかったらお前あのたらしに何されてたか分かんねえんだぞ」
『は…はい。わた…私も気を付けてはいるんですけど…って丸井さん』
「なんだよい」
『も…もしかしてその…助けてくれたんですか…?』
恐る恐る名無しが丸井を見上げると丸井は顔を赤く染めふいっと顔を反らしてしまった。
「た…助けたっつうか…目の前で襲われてる奴放っておいても寝覚めが悪くなるから仕方なくって奴だよい」
『そそ…そうだったんですか。あ…あのありがとうございます。優しいんですね丸井さんは』
照れながらも可愛らしく笑う名無しに更に顔を赤く染めてしまった丸井は頬を軽く掻きながらどかりと名無しの横に座り名無しをじっと見据えた。
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