番外編

□気になる理由
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悔しいがあの一件以来目が離せなくなっちまった。
多分元々ああいった陰険な事が大嫌いだという事もありまた目を付けられてやしないかとクラスは違えど毎日あいつを見守るのが日課になっていた。
こんなのは俺のキャラじゃねえと分かってはいても何故か名無しさんから目が離せなくなってるから俺自身も戸惑ってんだよ。

俺が心ここにあらずの状態でぼんやりと窓の外を眺めていると同じクラスの奴が俺を呼ぶ声が聞こえてきたので俺は眉を寄せながら呼ばれた方に振り向いた。

「おい海堂。可愛い子がお前の事呼んでるぜ」

「フシュゥゥ…可愛い子だと?」

『ああ…あの…薫君…』

「名無しさん?」

ドアから顔を覗かせたのは名無しさんで俺が目を見張りながら名無しさんの名前を呼ぶとクラスの奴らが興味津々といった様子で俺と名無しさんを見据えていたので俺はそれが面白くなくて荒々しく席を立ち名無しさんの元へ歩いていった。

「どうした」

『ひうっ…あ…あの実は薫君に今朝渡し忘れた物があって…』

「渡し忘れた物?」

『う…うん。実はこれなんだけど…』

名無しさんがバッグから何かを取り出そうとごそごそと手を探らせている間にすっかりと自分達が注目の的となっている事に気付いた俺は名無しさんの腕を掴み教室を後にした。

『え…あ、あの…薫君?』

「何渡しに来たか知らねえがそんなもん部活ん時に渡せばいいだろ。迷惑なんだよ」

『ごっ…ごめんなさい』

名無しさんの声のトーンが落ちた事で酷い事を言ってしまったとはっとした俺はまたやってしまったと後悔した。

違う
そういう意味で迷惑だなんて
そんな事を言いてえ訳じゃねぇ
人見知りなんだから無理すんなと
俺はただそう言いたかっただけだ

こういう憎まれ口を叩いちまうのは元来の性格であって今更変えようがねえとは分かってはいるもののそれを何故名無しさんに向かって言ってしまうのかマジでこん時ばかりは自分の性格が憎たらしいとさえ思ってしまう。

「いや…そうじゃねぇ。迷惑っつうかそうじゃなくてよ…」

『い…いいの。そうだよね。急に来られたら迷惑だもんね』

「フ…フシュゥゥ…だからそうじゃねえって言ってんだろがっ」

『ごご…ごめんなさいっ』

ああ…畜生
またやっちまった
何で俺はこうすぐ怒鳴っちまうんだ
見ろ
名無しさんが滅茶苦茶怯えちまってる

ビクビクと体を震わせる名無しさんにこれ以上余計な事を言って怖がらすまいと思い俺は無言のまま名無しさんの腕を引き再び廊下を歩きだした。




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