番外編

□君の味はグレープ味
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あ〜あ
何で俺1年生なんだろ
ていうか何であいつは2年なんだよ
あんな鈍ちん馬鹿の癖に
俺より年上なんて生意気過ぎ

俺は授業中教師の下手くそな英語を聞き流しながら窓の外を眺めぼんやりとそんな事を考えていた。
最近俺の頭の中には常に名無し名無しさんっていうドジな女が居続けていてそれこそなんか四六時中考えちゃうんだよね。


あいつの事好きっていうかさ
まあ気にはなるんだよね
気になるって事は好きなんだろうけど
よく分かんないかも


じゃあ何で海に行った時にキスしてもっと触れたいなんて思ってしまったのかなんて更に疑問が出てくるけどこんな面倒臭い気持ちになるのはうんざりだし早くケリ付けなきゃとも思うんだけどさ。


「それが出来てたら苦労してないんだよ」


「ん?なんだ越前。分からない所でもあったか?」


「別に…何でもないっす」


声に出ちゃうなんて俺ってもしかしてかなり重症?冗談じゃないんだけど。なんで俺が馬鹿名無しさんの事で重症になんなきゃいけないんだよ。
苛ついては溜め息を吐き、溜め息を吐いては苛ついての繰り返しでどんなに悪態を吐いてみても名無しさんを嫌いになれないし自分でも本当に訳が分からない。
テニスの事なら断然得意だけどこっちの事では自分はまだまだなんだと思うと悔しくもありくすぐったくもある。


「おい越前。お前さっきから何で溜め息ばっか吐いてんだよ」


「勝手に盗み聞きなんて趣味悪いんじゃないの?」


俺が悩んでいる間に休み時間になっていたみたいでいつの間にか教師は居なくなっていたしさっきの俺の言葉に機嫌を悪くする堀尾を冷めた目線で見据えたあと俺は次の時間が昼休みだという事を思い出し慌てて席を立った。


「なんだよ急に」


「昼ご飯は先輩達と食べる約束してるから。じゃあね」


堀尾が何か言ってたけどそれを聞いてる時間なんてなかった。
ていうかその数分の時間さえ惜しい。
だって一分一秒でも早く名無しさんに逢いたいからさ。
自分でも驚く程鼓動を高鳴らせながら俺は屋上へ続く階段を一気に駆け上がりノブを回した。






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