彼女の愛で方

□Lesson16
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――side FUJI

いつからだったんだろう
僕が名無しに対して
こんなにも歪んだ感情を
抱くようになったのは


僕は名無しの部屋に向かいながらそんな事を考えていた。


「…やっぱり傷付いてるかな」


当たり前だよねそんな事
だって僕以外の人に抱かれた訳で
名無しは僕の事大好きだし
傷付いてるに決まってる


実は僕自身大事な恋人である名無しが跡部に抱かれたと聞いた時は“跡部に対して”じゃなくて“その場に”僕が居なかった事に対してムカついているんだよね。

始めは本当に僕だけの名無しで居て欲しかった。
けれど彼女の事を抱けば抱く程、そしてあの乱れた顔を見る度に“僕以外”に抱かれている名無しはどれだけ乱れてどんな表情を見せるのだろうかと見たくて仕様がなくなってきていたのも事実だ。

だからこそ跡部に抱かれていた時の名無しを見られなかった事が悔しくてならない。


「クスッ…僕ってとことん歪んでるなぁ。名無しの心さえ僕だけの物だけであればいいやなんて思う僕は最低な彼氏だね」


名無しの部屋の前に辿り着きドアをノックするとか細い声で返事が帰ってきたので僕はノブを回し部屋の中に足を踏み入れた。


「名無し」


『しゅ…周ちゃっ…』


泣いていたのか名無しの目元は赤くなっていて僕がそれに気付き困ったような表情を浮かべると名無しは顔を隠すように俯けてしまった。


「泣いてたの?」


『そ…そんな事…』
 

「跡部から聞いたよ。抱かれたんだって」


『…っ…ごっ…ごめんなさい周ちゃっ…わ…私抵抗したんだけどでも…』


折角収まってきていた涙が再び名無しの目から零れ落ちてきたので僕はベッドに腰を下ろし名無しの頭を撫でながらその横顔を見据えた。


ああ、うん
こうして罪悪感で泣く名無しも
中々可愛いかもね


ざわざわと沸き上がる嗜虐心に僕は笑みを浮かべてしまいそうになりながらも流石に今の名無しの前でそんな顔を見せる訳にもいかず名無しを抱き寄せた。


『ごっ…ごめ…ね…ヒクッ…き…嫌いにならないでっ』
 
 
「馬鹿だなぁ名無しは。どうして僕が君を嫌いになるなんて思うの」


『だ…だって私周ちゃん以外の人に…ぅぅっ』   


「それだけで僕は君を嫌いにはならない。さあ、もう泣き止んでよ名無し」


僕が名無しの頬に流れ落ちる涙を指で拭うと名無しはどうして責めないのかというような表情で僕を見据えてきたので僕は思わず苦笑してしまった。


「ねえ名無し。僕の話を聞いて欲しいんだ」


『周ちゃんの…?』


「そう。ふふ、でもこの話を聞いたら逆に僕が名無しに嫌われちゃうかもね」


余裕を見せてはいるものの内心こんな馬鹿げた話をしたら名無しに嫌われてしまうのではと内心思ったけど黙っているよりはマシだと思い直し僕は名無しの体から腕を離した。






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