蜜より甘く
□scene10
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『うんよし!ばっちり』
「…名無し子よぉ」
『なに?銀ちゃん』
先程から鏡の前で身嗜みのチェックをしていた名無し子に銀時は呆れたように声を掛けた。
「本当にあいつらの依頼受けんのか?」
『勿論受けるよ』
「けど何の手掛かりも残さず姉ちゃん達を拐ってく連中を相手にするなんていっくら何でも危ねえような気がすんだよな俺ぁ」
『大丈夫大丈夫!いざとなったら私には“これ”があるしね』
そう言って名無し子は着物を捲り太股に付けられている小刀を銀時に見せると銀時は鼻を抑えながらそっぽを向いてしまった。
この女はあれだ。
阿呆じゃなかろうか。
というより自分に気のある男の前で太股を晒すとは一体どういう神経をしているのかと銀時は溜め息を吐き出してしまった。
『どうしたの銀ちゃん』
「どうしたもこうしたもねえ。すぐに太股を見せ付けるのは止めろ。というか銀さん以外には絶対見せ付けないで下さい」
『え〜、何で?パンツ見せてる訳じゃないし太股位…』
「はいそこ!女の子がパンツなんて言わないで下さぁい!」
『銀ちゃんのツッコミ所がいまいち私には分からないよ』
「ったくマジで頼むぜ名無し子。そんなんじゃ俺ぁ心配で仕方なくなんじゃねえか」
銀時はソファから立ち上がり女らしく、そして可愛らしくアップに結わえられた髪の毛に触れ困ったように微笑んだ。
「囮になるだけなのにな〜にバッチリめかしこんじまってんだよ。どうせなら銀さんとのデートの時にめかしこんで欲しいもんだぜ」
『だって身嗜みきちんと…っていうか女の子らしく可愛くしないと目を付けてくれないかもしれないじゃない』
「馬鹿。お前それ以上可愛くなってどうすんだよ。それにそこら中の男に目ぇ付けられまくって大変な事になりそうな気がすんだよなぁ銀さんは」
『もう〜、心配性だなぁ銀ちゃんは。大丈夫だって言ってるじゃない』
「本当かよ」
『本当だってば。私は普通に見えて普通じゃない女なんだから』
「ほ〜、普通じゃないねえ」
銀時はにっと口端を上げ名無し子を抱き寄せキスを落とし、その突然の出来事に名無し子は目を見張ってしまった。
『ぎぎ…銀ちゃん!』
「ふん…“隙あり”だな名無し子よぉ」
『ななっ…』
「なぁにが普通の女じゃねえだ。そんだけ隙見せてて笑わせてくれんなおめぇは」
『笑えない!1つも笑えないからっ』
「そんなに睨むんじゃねえよ。そもそもおめぇが馬鹿な事言ったのが悪いんだろ」
銀時に向かって名無し子が言い返そうとするとタイミングよくチャイムが鳴り響いたので名無し子はグッと文句を言いたいのを堪え銀時を一睨みしたあと玄関へ向かっていった。
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