deep sleep

□泣き顔が好き
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メンバー達に上手く乗せられた跡部は自分の手をきつく握り締めながら横を歩く名無しさんを見下ろした。


「大丈夫かよ」


『う…うん。今の所だいじょ…ひゃぁっ』


「なっ…なんだよ。何急に変な声出してんだよ」


『だだっ…だって今何かに背中触られて…や!』


「お前よ。こんな真っ暗ん中でんなエロい声出してんじゃねぇよ!ヤりたくなっちまうだろがっ」 


『そんな事言われたってさっきから脚とか腰とか何かに触られるんだもん』 

「あーん?」


跡部はすぐ後ろと横にいるメンバー達をじろりと睨み付けた。


「てめぇら…暗い事をいい事に触ってんじゃねぇよ」


「なんの事や。そない事言われても俺ら何も分からんし」


「そうですよ跡部さん。人聞き悪いですね」


「馬鹿か。幽霊役がんな際どいとこ触る訳ねぇだろが」


跡部とメンバー達がそういい争う中名無しさんが怖々と辺りを見渡していると耳元付近に冷たい空気が流れた。


『なっ…なに?』


「もうお前は帰れないよ…ふふ、うらめし…」


『やぁ!!もっ…無理無理!!本当無理だってばぁっ』


「おい名無しさん?!」


名無しさんは跡部の手を振り払い全速力で建物の中を駆け抜けていってしまった。


「チッ…おいお前ら。俺様は先に行って名無しさんを見付けてくる」


「なら俺らも…っておい跡部!」


忍足の言葉を最後まで聞かず跡部は暗闇の中を駆け抜けていった。


 

『ぅっ…ここ何処なの?皆とはぐれちゃったし怖いし本当に最悪っ…』


名無しさんは怖さのあまり進む事も戻る事も出来ずその場にしゃがみ込み涙をぽろぽろと流してしまった。    

『ヒクッ…怖いよ…景吾ぉ』


その名前を呼んだと同時に後ろからふわりと抱き締められ名無しさんは目を見開きながら腰を抜かしてしまい地面に座り込んでしまった。


『ここっ…今度は何なの?!も…やだぁ』


「落ち着け。俺様だ」


『け…ご?』


「お前こんな時だけ足早過ぎだ。追い付くのに時間かかっちまったじゃねぇか」
  

『だ…だって本当に怖かったから』


「まあいい。いつまでも座ってねぇで立てよほら」


『ありがと…』


差し出された手を取り立ち上がろうとしたが腰が抜けているせいか上手く立てずにいるとふわりと体が浮いたので名無しさんは目を見開いてしまった。


『けっ景吾?!』


「立てねぇんだろ?ならこうした方が早ぇ」


『大丈夫だから下ろしてよ!流石にこのまま出口に行くのは恥ずかし過ぎるっ』


「あーん?何が恥ずかしいんだ。俺様にこうして姫抱きされる事光栄に思えよ名無しさん」


『光栄にってあのね』


「…悪かったな」


『え?』


「何があってもこの手は絶対離さねぇと約束したのに離しちまった上こんなに目赤くしちまう程怖い思いさせてよ」


跡部がそう告げながら名無しさんの頭にキスを落としたと同時に名無しさんは安心したせいか再びとめどない涙を溢れさせてしまう。




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