彼女の愛で方
□Lesson1
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無事にクラスメートにも歓迎され何事もなく1日の授業を終えた名無しはいそいそと荷物を鞄に詰め教室を出ると廊下と階段を全力疾走で駆け抜けていた。
『さ...3年6組っ...はっ...もうすぐ会えるっ』
息を乱しながら廊下をキョロキョロとする名無しを物珍しそうに生徒達は眺めていたが二人組の男子生徒がそんな名無しに声を掛けてきた。
「ねえ君どうしたのかにゃ?」
「誰か探しているのかい?」
『えっ...あ...あの、わた...私不二先輩を探していて...』
「不二?不二ならこのクラスだけど...」
珍しい髪形をした少年が指し示した方に視線を向けた名無しは目的の人物を見つけた瞬間鼓動を高鳴らせながら満面な笑みを浮かべ教室の中へ駆け込み一直線にその人物の元へ駆け出した。
『周ちゃん!』
「え...わっ?!」
『周ちゃん凄い久し振り!会いたかった!!』
「君は...それに周ちゃんってもしかして...」
「「「きゃあぁぁぁ!!」」」
「「「私達の不二君がっ...!」」」
不二に飛び付いた名無しをクラスの女子生徒達が睨み付けていたが名無しはそれを気にする事なく不二の胸元に顔を埋めた。
『周ちゃん...』
「名無し?君、名無しだよね」
『うん!ただいま周ちゃん』
名無しだと認識した不二は口元を綻ばせながら名無しを強く抱き締めた。
「ふふ、駄目じゃない名無し。飛び付いたら危ないって昔もあれだけ言ったのに全然変わらないんだから」
『だって嬉しかったんだもん』
「まあ今日位は許してあげようかな。ねえ名無し、よく顔見せてよ」
『うん』
不二は名無しを少しだけ離し顎に手を添え目を細めながら名無しを見据えた後満足気な顔で微笑んだ。
「とびきり可愛くなったね名無し。流石僕の名無しだよ」
『ふふ、そうかな』
「うん。それにしても相変わらず小さくてマシュマロみたいに柔らかくて可愛い名無し」
『周ちゃんも相変わらず格好良いね。ううん、とっても格好良くなった』
「クス...ありがとう」
「コホンッ...いい所邪魔して悪いんだけど...」
「その子誰なの?不二」
どっぷりと二人の世界に入っていた二人の元に気まずそうに先程の二人組の男子生徒達が声を掛けてきたので咄嗟に名無しは不二の後ろに隠れてしまった。
「ありゃりゃ。怖がらせちゃったかにゃ?」
「ううん、違うよ。この子は元々極度の人見知りで初対面だといつもこうなっちゃうんだ」
「その口振りだとよく知った仲って事かい不二」
「うん。名無しは僕のいとこで名無しさん名無しっていうんだよ。8年前まで僕の隣に住んでたんだけど名無しの父親の転勤で引っ越していったんだけどまたこうして戻ってきたんだ」
「ほえ〜、そうだったんだ。それにしても不二のいとこなのに不二と正反対で素直そうな...」
「なに?なんか文句あるの?」
「...にゃいです」
『あ...あの...』
不二の後ろからそろそろと顔を出した名無しは二人を見上げながら頭を下げた。
『さ...さっきはあの...親切にして頂いたのにお礼も言わずすみませんでした。ありがとうございました』
「え?ああ、構わないよ。俺も英二も全然気にしてないしさ」
「そうそう!ぜ〜んぜん気にしなくて大丈夫だよん」
そう笑ってみせる二人に名無しは照れたような笑みを浮かべてみせた。
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