彼女の愛で方
□Lesson1
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『優しいんですね、先輩達は』
「え?!あ...そ...そうかな」
「か...可愛いにゃ〜」
「名無し」
『なに?』
不機嫌そうな顔をしながら自分の名前を呼ぶ不二に名無しは首を傾げてしまった。
『周ちゃん何か怒ってる?』
「クス...怒る?僕は別に名無しには怒ってないよ。ただ目の前の空気読めない二人にムカついてるだけだから大丈夫」
「不二...それはつまり怒ってるって事だよな」
「あっ、そうだ!俺達の名前まだだったよね?俺は菊丸英二っていう名前でこっちが大石秀一郎っていうんだ」
『菊丸先輩と大石先輩...ですか?』
「んっ、そうだよ〜!」
「ちょっと英二。僕の許可なしに名無しに話し掛けないでよ」
「ねえねえ不二君!」
「ん?なにかな」
女子生徒達が名無し達の目の前まで近付きここぞとばかりに不二にアピールをし始めた。
「そこのいとこちゃんに久し振りに会えたんなら再会パーティ皆でしない?!」
「そうだよ〜!今日は部活休みでしょ?なら私達といとこちゃんの再会&歓迎パーティしようよ!」
「う〜ん...困ったな。どうしよう」
不二はそう言いながらもこの状況に戸惑い俯いてしまっている名無しの手を握ってきたので名無しが思わず顔を上げると不二は悪戯な笑みを浮かべて名無しを見下ろしていた。
「ねえ名無し。僕どうすればいいと思う?」
『あ...』
「楽しそうだし行っちゃおうかな。ね、名無しだって僕と二人きりでそういうのやるのは寂しいでしょ?」
『わ...私っ...』
恥ずかしさも手伝ってか名無しは目を固く閉じた後返事の代わりに不二の手を力一杯握り締めると不二は満足そうに微笑んだ。
「折角誘ってくれたのにごめんね。名無しは極度の人見知りだから皆で一緒にはやっぱり難しいかな」
「そ...そういう事なら仕方ないよ。ね、皆」
「う...うん」
あからさまに肩を落とす女子生徒達に不二はもう一度謝った後鞄を手に取り名無しの手を強く握り返した。
「帰ろうか名無し」
『うっ...うん!』
「え、じゃあ俺達も...」
「なに?よく聞こえないな」
「...何でもない」
不二の冷笑に菊丸と大石が体を震わせている間に不二は名無しの手を引き教室を後にしていった。
『周ちゃん』
「なに?」
『あの...どこに行くの?私の家そっちじゃないよ』
「クス...何言ってるの名無し。さっきも言ったじゃない。おかえりなさいパーティしようって」
『してくれるの...?』
「当たり前でしょ?僕の可愛い可愛いお姫様が戻ってきたんだからさ」
不二のその言葉を聞いた名無しはぱぁっと表情を輝かせ花が綻ぶような笑みを浮かべた。
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