彼女の愛で方
□Lesson8
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「クックッ...そう震えなくてもいいだろ」
『あ...あの...でも』
「この間は平気だったじゃねぇか。...色々とな」
跡部が名無しの耳元で意地悪にそう囁くと名無しは頬を赤く染めてしまいそんな名無しの反応を見逃さなかった不二は間に割って入った。
「名無しに何の用なの跡部」
「お前には関係ねぇだろ」
「あるよ。僕はこの子の恋人だからね」
「いとこ同士で恋人だと?ハッ...恋人っつうか手近にあった玩具をいいように扱ってるの間違いだろ」
「そんな言い方止めてくれないかな。僕は名無しの事玩具だなんて思ってないよ」
「綺麗事なんざどうとでも言えるからな。おいチビスケ」
『なっ...なんですか』
「お前今日部活終わったら俺様に付き合え」
『むむ...無理です!』
「あーん?無理じゃねぇよ。俺様と最初に会った時に俺様が言った事忘れたのかよ」
『え...?』
「この俺様に口答えした詫びはしてもらうと言った筈だ」
『むっ...無理無理!絶対無理です!あ...跡部さんと二人でなんて...』
名無しに詰め寄る跡部を不二は鋭い視線で見据えた後名無しを抱き寄せいつもの笑みを浮かべてみせた。
「3人でならどう?」
「あーん?」
「僕が付いてれば名無しだって安心だろうし跡部だって名無しと出掛けられるし一石二鳥でいいじゃない」
「そんな事がゆ...」
『そっ...それなら!いい...です』
「...そんなに俺様と二人で出掛けんのは嫌かよ」
『嫌っていうか...無理なだけです』
「それを世間一般じゃ嫌っていうんだよっ」
名無しとのやり取りに跡部は痛むこめかみを抑えながら溜め息を吐き出した。
「チッ...仕様がねぇ。それでいい」
「ふふ、良かった。ね?名無し」
『うん!』
嬉しそうに笑う名無しに再び跡部は面白くないといわんばかりの顔をしながら二人に背中を向けた。
「俺様は車で待ってる。終わったらとっとと来い」
『は...はい』
「クスッ...相変わらず上からだね跡部は。なるべく急いでいくよ」
コートを出ていく跡部の背中を見送りながら二人の元に部員達が集まり一斉に名無しに視線を向けた。
「...惚れられたのか名無し」
『はっ...はい?!』
「全く...どうしてお前はああいう厄介なのを引き寄せるんだよ。まだまだなのもいい所だから」
「不二...跡部はなんて?」
「え?ああ、うん。名無しと出掛けたいんだってさ。でも僕も付いていくから問題ないよ」
「そうか。ならば名無しの事を頼んだぞ不二」
「君に言われるまでもないよ手塚。まあ僕に任せておいてよ」
不二は手塚の肩に手を置き笑みを浮かべてみせた。
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