蜜より甘く
□scene7
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今日は出掛けると高杉から聞いた名無し子は特にそれを深く追及する事なく頷き拠地をあとにした。
桂の依頼で遊郭に潜入する事になっているので昨日よりかは早い足取りで万事屋に向かっていた名無し子だったが銀時から思いもよらない告白を受けた事を思い出してしまいピタリと足を止めてしまった。
『…まああれよね。とにかくいつも通りで行こう、うん』
正直な気持ちを言ってしまえば驚きはしたが銀時が自分をそういう目で見ていてくれたという事は嬉しい。銀時は昔から自分にとっては大好きな人で唯一無二な存在だったから。けれど今はそれ以上に高杉が好きだしあのふてぶてしい態度だって愛おしいとも思っている。
まさか自分がこんなに優柔不断な性格だったとは思いもしなかった名無し子は苦笑いを浮かべながら再び足を踏み出した。
『おはよう!ってヅラも居たのね』
「居ては悪いのか」
『そんな事言ってないでしょ』
「…今日の事で色々策を練らねばと思ってな」
『ああ、そうね』
新八と神楽と挨拶を交わしあっていた名無し子だったが銀時と視線が合った瞬間にお互い同時に顔を赤く染め上げてしまいぎこちない笑みを浮かべあった。
「よ…よお」
『う、うん。おはよう銀ちゃん』
「お二人共様子が変ですけど何かあったんですか?」
『え?!な…なんにもないけどっ』
「そっ…そうだぜ新八!俺ぁ別に名無し子に告白したとか押し倒したとかそんな…」
『わ〜!わ〜!わ〜!』
「ど…どうした名無し子。お前がそんなに声を張り上げるなんて珍しいな」
『えっ?!ほ、ほら!朝一番に大きな声出さないとやる気出ないでしょ?!だから声出ししただけ!』
変な奴だと呟きながら大して気にする素振りを見せない桂にほっと胸を撫で下ろしたあと名無し子は思い切り銀時を睨み付け余計な事は言うなとジェスチャーを送った。
「遊郭に入るにはまず理由が必要だろう?それはどうする」
『あ、うん。それは適当に言えるでしょ』
「ほう。例えば?」
『“信じてた男に借金背負わされて裏切られて住む所も奪われたから雇って欲しい”なんていうのはどうかしら』
「ふむ。悪くないな。しかし名無し子はともかくとしてそっちのチャイナ娘は遊女として雇って貰えるかどうか」
「舐めんなよヅラ!私だって見た目はこうだけど脱いだら凄いアルよ!」
「ハッ…その程度でか」
「鼻で笑ったアルか?!今鼻で笑ったアルな?!その頭本当にヅラにしてやるからちょっとこっちに来いヅラ」
『まっ…まあまあ神楽ちゃん落ち着いて。確かにヅラの言う事も一理あると思うわ。けどとっておきのいい方法があるから安心してちょうだい』
「とっておき?そりゃあなんだよ名無し子」
『ふふ、まあ任せてよ。私だって悪知恵位働くんだから』
にっと悪戯っ子のような妖しい笑みを浮かべる名無し子に桂と銀時は顔を見合せ首を傾げ合った。
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