彼女の愛で方
□Lesson16
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「あっれ〜?名無しちゃんが居ないし。ちょっと跡部君。君、名無しちゃんの事何処に隠してきたのさ」
「あーん?隠すってなんだよ。俺様はそんな事しねえよ」
「うっそだ〜!だってさっきまで名無しちゃんと一緒に居た癖に名無しちゃんが居ないって事は何処かに隠してきたって事でしょ?」
「千石てめぇ…俺様に喧嘩売ってんのかよ」
跡部の額に青筋が立ってきたのに気付いた千石はへらりと笑いながら跡部の肩に腕を回した。
「馴れ馴れしく触ってんじゃねえぞこら。俺様はそっちの気はねえ」
「まあまあそう怒らないでよ。とりあえず名無しちゃんが何処に居るか教えてくれないかな」
「…名無しなら具合がわりぃって言って部屋に戻ったぜ」
「えっ、そうなの?ご飯食べられないとか可哀想に…俺が部屋まで運んであげようかな」
「おい千石」
「なに」
肩に回されている腕を払いながら跡部は千石を鋭い視線で睨み付けた。
「な〜にそんな怖い顔しちゃってるの?」
「お前も名無しに惚れてるようだがあいつは俺様の物でもあんだからちょっかい出すな」
「“も”ってどういう意味?」
「俺様はあいつに心底惚れてる。で、その気持ちをあいつに正に文字通り“全身全霊”をかけて伝えた。この意味がどういう意味か分からねえ程馬鹿じゃねえだろ」
跡部の言わんとする事を理解出来たのか千石の表情はみるみる曇っていきそんな千石に対して跡部は鼻を鳴らしたあと背を向けた。
「ちょっと待ちなよ跡部君」
「なんだよ」
「そんな事位で勝ち誇らないで欲しいね」
「あーん?」
「まだ合宿は長いんだからさこの先何が起こるか分からないんだし余裕ぶらない方がいいんじゃないかって事」
「てめぇ…」
千石は不敵な笑みを浮かべ跡部にそう告げいつものおちゃらけた態度でその場を去っていってしまった。
「チッ…あいつ。どうやらただのちゃらけた奴じゃねえらしい。油断ならねえな」
「おい跡部」
「ちょっと跡部」
「「ん?お前も跡部に用があるの(か)?」」
「揃いも揃って俺様に何の用だよ手塚に幸村」
「「名無し(ちゃん)の事何処に隠した(んだ)の」」
「ハモってまで失礼な事言ってんじゃねえぞこら。たく、どいつもこいつも…」
「何言ってるの跡部。だって跡部っていかにもって顔してるじゃないか。ね?手塚」
「ああ。いかにもという顔をしているな」
こんな時だけ見事なまでの連携プレイをみせる幸村と手塚に跡部は舌打ちを吐いたあと面白くなさそうな表情を浮かべながら自分の席へ戻っていった。
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