番外編

□華麗なる高杉様の1日
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『ままっ…待ってよ。だっ…だって凄く綺麗だよ?』

「あいつぁ元がいい男だかんな。化粧と着物着ちまえばそりゃそうも見えんだろ」

『ゆ…遊郭で働いてるじゃない』

「正式には情報屋として働いてるだけだ。それは店主も知ってる事だしあいつを指名したがる奴は大抵情報が聞きたくて来る奴らばかりだから金を上乗せしてくる客はまず普通の客じゃあるめえと店主は理解してる」

『あ…ああ、成る程。だからあの時店主さんは通してくれたんだ…あっ、で…でもそれじゃあ』

「まだ何かあんのかよ」

あるわよ。
そりゃもうあるに決まってる。
けれどこれを聞いて傷付くような事を言われたらどうしよう…
私は悩んだ末晋助をじっと見据えながらゆっくりと口を開いた。

『どうしてあの時河上さんにここで私の名前を言うなって言ってたの?それにどうして他の人のお酌は嫌で紫水さんなら良かったの?』

「そこまで聞いてたのかお前」

『…うん』

「何て顔してんだよ名無し子。そんな顔してんじゃねえ」

『だって…』

「終わった事だしもう言っちまってもいいが酌を断ったのには理由がある。俺に酌勧めて来た女は最近出来たっつう過激派の仲間みてえでな」

『え…あ、それってもしかして今朝話してた?』

「そうだ。どうやら俺がここの馴染みと聞き付けたらしくあの女を寄越してきたらしい。紫水に今日ここに来た時事前に聞いてなきゃ危うく毒入りの酒呑まされちまうとこだったぜ」

『それじゃああの男達も過激派の連中だったんだ。隣できっと様子伺ってたんだね』

「ああ。そんな連中の前でお前の名前なんか出してみろ。どこから飯島に洩れちちまうか分かりゃしねえしだから俺ぁ万斉にお前の名を出すなと言ったんだ」

『な…なんだ。そうだったんだぁ』

安堵からか私はへなへなと畳に座り込んでしまい、それを見た晋助は喉を鳴らしながらしゃがみ込み私の顎を掴み上げキスを落としてきたので私は思わず目を見張ってしまった。

『し…晋助?』

「それにしても俺の1日が知りてえだなんて随分可愛い事言ってくれるじゃねえか名無し子」

『しっ…知りたいっていうか本当に気になっただけで…』

「教えてやろうか?俺が1日何をして何を考えてるかよ。知りてえだろ」

『あ…あの…教えてくれるのなら…』

「クックッ…いいぜ。俺ぁな、まず起きたらお前が居る事を確認する。居ねえ時は必ずまた子や武市にお前の姿を見てねえかと確認して見てねえと抜かしやがったら探させて万屋へ行っただの何処へ行っただのと報告させる」

『へ…へえ』

「お前が居ねえ日中はここへ来て紫水に蛇腹に動きはねえかとか俺が見てねえ間に誰かに口説かれてねえかの情報を聞いてる。ついでにお前がどれだけ可愛い女かって話も紫水にしてやってんだ」

『あ…ああ…だから紫水さんさっきあんな事を…』

「拠地に帰ったら帰ったで早くお前が帰って来ねえかと酒呑みながら待ってる。これが俺の1日だ。つまり俺ぁお前の事1日中ずっと考えてるってえ事になるな」

『晋助…』

晋助からのその言葉に私は心底嬉しくなって今度は別の意味での涙を溢れさせていると晋助はもう一度私に優しくキスをしてくれながら私を畳に押し倒した。
ん?
んんっ?!
えっ、押し倒したって何?
ちょっ…何で晋助はそんなに不敵に笑ってるのよ。
さっきまでの優しさはどこにいっちゃったの?!







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