番外編

□乾のデータ記録物語
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名無しさんは次は何処へ行くつもりなんだ?
ああ、水を飲みに来たのか。
俺に言ってくれればドリンクの1つも2つも喜んで作ってやるのに本当に遠慮深い奴だな。

『…はぁ。美味しい』

「ここに居たのか名無しさん」

『国光先輩』

手塚だって?
おかしいな…
今は確か練習中の筈だがまさかあの練習の鬼の手塚がサボりなどと…
い、いやいや。
もしかしたら部長してマネージャーに用事があるかもしれないし早とちりはいけないぞ貞治。

「勝手にふらふらしては駄目だと言っているだろう」

『ご…ごめんなさい。あの、でも一段落ついたら戻るつもりで…』

「名無しさん…」

『きゃっ…!』

これは見間違いだろうか。
そうだ、見間違いに決まっている。
あのお堅くて奥手でテニスしか頭に無い手塚が女子を抱き締めるなんてそんな事ある訳がない。
俺は目の前の信じられない光景に思わず固まってしまったが手塚は俺に見られている事など知らず名無しさんの顎に手を添えそう…まるで今からキスをするように名無しさんに更に顔を近付けていった。

『せっ…先輩駄目です!』

「何故駄目なんだ。俺達との約束を破った罰をするだけなのに」

『ばば…罰って…』

「なあ名無しさん。俺はあの日の事が忘れられないんだ。あの日からお前と毎日こうしたいと考えては悶々とした日々を送っているのにお前はその責任を取ろうとは思わないのか」

『ああ…あの…』

「俺が部活を抜けてまでこうしてお前に触れにきたのだからそれに答えてくれ」

ああ、手塚…
やはりお前は部活をサボってきたのか。
そうなんだな?
それにしても“あの日”とはなんなんだ。
気になって仕方がないじゃないか。
それにそんなに頬を赤く染めてしまうなんてお前のキャラ崩れ過ぎだろう手塚。
乙女過ぎてお前のファンが泣くぞ。

『ややっ…止めて下さいっ』

「名っ…名無しさん?」

『い…今は練習中の筈なのにそれを部長である国光先輩がサボってこんな事しにくるなんて…みっ…見損ないました!』

「なっ…」

『国光先輩のエッチ〜!!』

「あ…名無しさん待ってくれ!」

手塚が呼び止めたのにも関わらず名無しさんはその場から立ち去っていってしまった。
しかし名無しさん。
お前鈍臭そうだと思っていたが意外と足が早いんだな。

「名…名無しさんにエッチと言われてしまった…それにしてもあの怒った顔もまた可愛らしいな。さっきは逃げられてしまったが次は油断せずに名無しさんに迫らなければな」

そう訳の分からない事を至極真面目な表情で呟く手塚に俺は呆れながらもデータノートを広げ取りたてのデータを書き込んでいった。
名無しさんは押しに弱いと思わせつつ意外とはっきり物事を言えるタイプのようだ。
そして手塚は…
毎日あれだけ部員達に厳しい指導をしている癖に頭の中では常に名無しさんとのあられもない行為を思い描くとんでもなくムッツリな奴だった、と。
くっ…俺は情けないぞ手塚。
俺は情けなさから体を震わせたが名無しさんのデータを取る為にそのあとを追っていった。






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