番外編
□乾のデータ記録物語
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名無しさんは一体何処へ行ったんだ。
ああ、あそこに居たのか。
そういう時間だしドリンク配りとタオル配りで忙しそうだな。
ふむ…しかしあの堅物の真田とも仲が良いだなんて中々うちのマネージャーもやるじゃないか。
「いつも時間に的確だなお前は」
『あ…ありがとうございます真田さん』
「ふ…謙遜する事はない。どれ、褒美として頭を撫でてやろう」
あの皇帝と呼ばれる真田があんなに顔を緩ませて名無しさんの頭を撫でてやるなんて…こ…これは貴重なものを見たな。
俺がその様子を見ながら必死でデータノートに書き込んでいると幸村がにこにこと笑みを浮かべ二人の元へ近付き名無しさんを抱き寄せたので俺は動かしていた手を止め目を見張ってしまった。
あ…あの幸村が練習を中断してまで名無しさんの元へ来るだと?!
理屈じゃないなこれは。
というより跡部といい手塚といい幸村といい…名無しさんはゴ○ブリホイホイならぬ部長ホイホイのような奴だ。
「真田…お前何名無しさんに馴れ馴れしくしてるの?」
「ゆっ…幸村…いや、これはだな」
「言い訳はいいからさっさと練習戻りなよ。人が見てない隙に名無しさんと仲良くしようとするなんて本当にムッツリには困ったものだ」
「すす…すまなかった」
『あ…あの幸村さん…』
「ふふ、駄目じゃないか名無しさん。あんなのに頭撫でられたらさ。俺が消毒してあげるね」
『あ』
消毒って幸村…
それは消毒になるのか?
ただ頭にキスをしているだけじゃないか。
それにそんなに嬉しそうな表情を浮かべてしている癖にどこが何が消毒だというんだ。
『ゆゆっ…幸村さ…』
「幸村さんじゃなくて精市って呼んでっていつも言ってるでしょ?本当にお前は物覚えが悪くて馬鹿な猫だね。そんな馬鹿猫には体で教えてあげるしかないかな」
や…止めろ幸村。
手塚同様お前もキャラが崩れ過ぎだぞっ。お前こそ王子キャラなのになんなんだそのドス黒さと卑猥さは。
誰もそんなお前を望んではいないぞ幸村!
とは思いつつ俺はデータノートに幸村は腹黒だと書き込みながらその様子を見ていると何処からかわらわらと部員達がわいて出てきたので俺は思わず額から汗を流してしまった。
お…おい。
これはまさか全員名無しさん目的で集まってきた奴らなのか?
これは部長ホイホイどころか部員ホイホイな奴なんだとデータを訂正しなければならないな。
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