番外編

□乾のデータ記録物語
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「おいこら幸村。お前名無しさんを独り占めしようったってそうはいかねえぞ」

「せやで。もう立海に居ていい時間はとっくに過ぎとるんやから名無しさんをはよ氷帝に渡せや」

「そうですよ。これじゃあ何の為に決め事したのか分からなくなるじゃないですか」

「ちょっと待て。名無しさんは次は俺達青学の元に来る予定だぞ。何をふざけた事を言っているんだ」

「そうだにゃ!ちゃっかり順番抜かすなんて卑怯だにゃっ」

「決め事はきちんと守って貰わないとね先輩方」

名無しさんを挟み静かな火花を散らす部員達を見ながら俺は頭を抱え込んでしまった。
ちょっと待てお前達。
こうやって喧嘩をしない為に名無しさんが各校に居ていい時間は5分ずつと決めたんじゃなかったのか。
それに俺達の見本であるべき存在の部長達が一番睨み合ってるとは一体どういう事なんだ。

『みみ…皆さん待って下さい!お願いだから喧嘩をしないで』

「「「名無しさん…」」」

『も…もう少しで合宿も終わりなんですから仲良くしましょうよ』

「名無しさんちゃん君って本当に可愛いね」

『あ』

幸村や皆の隙をついて千石が幸村から名無しさんを奪い取るように名無しさんを抱き寄せ額にキスを落とすとそれに怒ったらしい部員達は千石に向かって罵言罵倒を浴びせていたが千石自身は大してそれを気にしていないのか部員達を挑発するような不敵な笑みを浮かべた。

「皆駄目だなぁ。取り決めしたってこうなる事は予測済みだったでしょ?ならやっぱりこういうのは早い者勝ちになるよね」

「千石てめぇ…」

『やっ…止めて下さいってばぁ』

「はい、そこまで。名無しさんは返して貰うよ千石」

「あ」

いつもの笑みを浮かべながら不二が千石から名無しさんを奪い取るように引き寄せいつもの倍以上の笑みを部員達に向けたが俺含め部員達はその笑顔に少しだけたじろいてしまった。
お…恐ろしい。
不二のあの笑顔は恐ろし過ぎだろう。
笑っては見せているもののあれは相当怒っているとみたな。

「全くどうして君達は名無しさんを困らせるような事ばかりするのかな。確かに愛でてあげるのはいいけどあんまり喧嘩になるようだったら二度と君達に名無しさんに触れられないようにするし口も利けないようにするよ?」

「何言ってるんだよ不二。なんでお前にそんな事言われなきゃならないんだよ」

「幸村の言う通りだぜ。お前に何の権限があってそんな事言われなきゃなんねえんだ」

「何の権限だって?そんなの決まってるじゃない。僕は名無しさんの恋人だからね。言っていい権限があるに決まってるでしょ。ああ、勿論いつでもこんな風にしていい権限もあるけどね」

『んっ…あ…しゅ…周ちゃ…』

「「「ああ〜!!」」」

「クスッ…行こうか名無しさん」

『う…うん』

絶句する部員達を尻目に不二は名無しさんを連れ遠目越しにその光景を眺めていた俺の元に辿り着くと意味深な笑みを浮かべながら俺の肩に手を置いた。







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