番外編

□初めてのキモチ
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「ねえ清、次は何処行く〜?」

「え〜?う〜ん…どうしようか」

「あっ、じゃあカラオケ行こうよカラオケ」

「カラオケね。いいじゃんいいじゃん」

とは口では言ったものの俺自身全く気乗りしなかった。
ていうか学校から出て遊んでるのはいいけど楽しくてラッキーとか両手に花で俺ってラッキーとか全然思わないのなんでだろう。
まずい…まずいぞ清純。
あのチャラっとした俺は一体どうしちゃったんだよ。
俺が唸りながら真剣に悩んでいるとポケットの中で携帯が震えたのでそれを手に取り操作をし、メール画面に出た名前を見た瞬間俺は嬉しさで思わず笑みを浮かべてしまった。

「名無しさんちゃん…」

「え?なに?」

「へ?ああ、何でもないよ。ちょっとごめんね」

「あはは、清の事だからまた女でしょ」

「さあ、それはどうかな」

茶化してくる女の子達を適当にあしらいながら俺は早速メール画面を開いた。
そこに書かれていたのは名無しさんちゃんらしく丁寧に返事が返せなかった理由とその謝罪のメールであの子らしいなと俺は吹き出してしまった。
なんだ…良かった。
嫌われた訳じゃなかったんだ。
まあそうだよね。
名無しさんちゃんはあの青学のマネージャーだしきっとやる事も沢山あってしかも勉強もしなきゃいけないんだから早々連絡出来ないのは当たり前だよね。

「何よ〜。随分機嫌いいじゃん」

「え、そう?」

「そうだよぉ。さっきからなぁんかのり悪いし〜」

「そんな事ないんだけどね」

「まあいいけど。じゃあカラオケ行こう」

「オッケ〜。あ」

「え?」

携帯から視線を上げた先に見覚えのある制服と後ろ姿に俺は目を見張ってしまった。
嘘でしょ?
ていうかあの子がそうならこんな偶然あっていいと思う?
ていうかそれこそ運命じゃん!
もしかしたら違うかもしれないしもしかしたらそうかもしれないと曖昧だったけど俺は先を歩いて行ってしまうその女の子を追い掛けようと女の子達にごめんとだけ言い残し今までにない位のスピードで女の子の元に駆け出していった。

「ねえ君待って!」

『…』

「待ってってばっ」

『え…あ、き…清純君?』

「やっぱ名無しさんちゃんだった!君にこんな所で会えて俺ってめちゃくちゃラッキー!」

『清純君どうしてここに…?あ』

「ん?」

『凄い汗。もしかして走って追い掛けて来てくれたの?』

「うん!だって名無しさんちゃんが居るって思ったらゆっくり歩いてなんかいられないからさ」

『…』

「名無しさんちゃん?」

『プッ…ふふっ。き…清純君ってば相変わらずなんだから。とりあえず汗拭かなきゃ。風邪引いちゃうよ?』

そう言って俺の汗をハンカチで拭いてくれながら可愛らしく笑う名無しさんちゃんに俺は胸を煩い位に鳴り響かせてしまった。
ああ、やっぱり名無しさんちゃんはかぁわいいなぁ。
何でこの子ってこんなに可愛いんだろう。
他の女の子と何が違うんだろう。
俺、何でこんなに顔熱くさせて緊張してるんだろう。
こんな事位どうって事ない筈なのに名無しさんちゃんだとどうって事がなくなっちゃう。
こんな気持ちは本当に初めてで俺は自分の気持ちに戸惑いながらまだ可笑しそうに笑う名無しさんちゃんに見惚れてしまっていた。






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