deep sleep

□願ってやるよ
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『さ〜さ〜のは〜さぁらさら〜』


そんな歌を唄いながら俺の部屋に飾ってある笹の葉に飾り付けをする名無しさんに俺はソファに座り苦笑しながら雑誌を読んでいた。


『うん、いい感じ!あとは短冊飾ればオッケーかな』


そう呟いた後名無しさんが俺の元へ近付いてきたので俺は雑誌を閉じ名無しさんを見つめた。


「終わったのかよ」


『うん。あとは短冊飾るだけだよ』


「そうか。それじゃあ俺様の相手しろ」


俺は名無しさんにそう告げながら名無しさんの手を取り甲にキスを落としニヤリと笑ってみせた。


『まだ駄目!はい、景吾もこれ書いてね』


「あーん?」


そう言いながら名無しさんは短冊を俺の前に差し出しにこりと微笑んだ。


「この俺様が願い事なんてすると思うか?願いなんざ自分で叶えるもんだろが」


『うわっ、相変わらず夢もロマンもない人だね』


「煩えよ」


『折角ミカエルさんに我が儘言ってこんな立派な竹用意して貰ったのにお願い事しなきゃ勿体ないでしょ?』


「ハッ…こん位俺様の我が儘の内に入んねぇから安心しろ」


俺様は七夕なんて興味ねぇんだよ
大体この竹を俺様の部屋に用意させたのだってお前が景吾と二人で七夕パーティーしたいな、なんて可愛い事言いやがるから雰囲気出すのに用意させただけなんだからな


『ああはいはい。景吾にロマンを求めた私が馬鹿でしたね』


「漸く気付いたかよ」


『全くもう…景吾にも彦星を見習って欲しい位だよ』


「どういう意味だ」


『だってさ、彼はもう何十年何百年と織り姫に逢う為に一年に一回の今日この日に天の川を渡るんだよ?すっごく素敵なお話じゃない』


そう言いながら名無しさんは顔をうっとりさせたので俺はそれが少し面白くなくて皮肉を言ってみた。


「ほう、素敵なお話ねぇ…俺様にはとんだ酔狂でマヌケな野郎としか思えねぇがな」


『なんでよ!』


「そもそも奴らが一年に一回しか逢えなくなったのは色事に毎日毎日興じちまって仕事しなくなったからだろが。自業自得だ」


『うっ…』


「そんな奴らに願い事をするなんざ真っ平ごめんだな」


俺がそう告げれば名無しさんは少し目を潤ませ始めたのでいい過ぎたかと思ったが俺様の前で空想上の人物とはいえ他の男を褒めやがった罰だと思えばこの良心の痛みなんてどうって事はねぇ




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