deep sleep

□狼な彼照れ屋な彼女
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「ったく何で俺様が…」


『あの…跡部君』


「あーん?」


『もしかしなくてもやっぱり怒ってる?』


隣で不機嫌そうにする跡部の顔を名無しさんは恐る恐る見上げた。


「…怒ってねぇよ」


『でも顔が恐いよ』


「気にすんな。元々だ」


『やっぱり歩きでデートって嫌だった?』


「嫌っつうか…大人しく車で移動すればいいものを何でわざわざ歩くのかが意味分かんねぇと思ってな」


そう呟く跡部に名無しさんは苦笑しながら跡部の手を取り握り締めた。


「なっ…おい」


『だって車じゃこうして手を繋いで歩く事って出来ないでしょ?私ね、一度でいいから跡部君とこうして手を繋ぎながらデートするの夢だったの』


「名無しさん…チッ…可愛い事言ってんじゃねぇよ。お前確信犯だろ」


『何で?』


「何でだと?馬鹿かお前」


跡部は空いている方の手で名無しさんの顎を捉えクイッと上を向かせた。


「そうやって可愛い顔しながら可愛い事言えば俺様が何も言えなくなると分かってやってんだろ。この小悪魔が」


『そそっ…そんな事ないよ!わた…私はただ本当にそう思って』


「クックッ…んな顔すんじゃねぇよ。今すぐにそこの路地裏に連れ込んで襲ってやりたくなんだろが」


『…っ…』


名無しさんが一気に顔を真っ赤に染めると跡部は更に喉を鳴らしながら笑い名無しさんの頭にぽんっと手を乗せた。


「冗談だ。そんな反応ばっかしてっとまじで襲うぞ」


『ごっ…ごめんなさい』


「別に謝る事じゃねぇだろ。で、何処に行きてぇんだよ」


『あ、うん。隣町に出来たアクセサリーショップに行きたいんだけど…』


「隣町?おい名無しさん」


『なに?』


「それはあれか。まさかこの俺様に電車に乗れと言ってやがんのか」


『そのまさかだよ』


「俺様はあんなゴミゴミした狭っ苦しい乗り物になんざ乗りたくねぇ」


『ふふ、たまにはいいでしょそういうのも。慣れれば結構便利だし楽しくなるよ』


名無しさんがにこりとそう微笑みながら跡部を見上げると跡部は少しだけ頬を赤くしながら舌打ちを吐き仕様がねぇなと呟いた。


「お前がそこまでいうなら乗ってやろうじゃねぇか」


『あはは、ありがとう』


「ただし楽しくも便利でもなかったらその詫びとして…」


『な…なに?』


「その先は言わなくても分かんだろ?」


『し…知らないよっ』


再び顔を赤く染めながら名無しさんは跡部から視線を逸らし歩き始め名無しさんに手を引かれながら跡部は面白そうに笑いながら駅に向かっていった。





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