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□My pretty girl
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「おい、いつまでそこに立ってるつもりだ」
『う…うん。ごめんなさい』
名無しは氷帝テニス部の部室に来ていた。何故そうなったかというとクラスメートである跡部景吾に呼び出されたからであってあまりに突然の事だった事もあり名無しはもじもじとしながら部室の隅に立っているしかなかった。
『跡部君あの…』
「話は座ってからだ。とっとと座れ」
『は…はい』
有無を言わせないその物言いに名無しは恥ずかしさも手伝ってか赤く染めた頬を隠すように俯き大人しくソファに腰を下ろした。
「お前に聞きたい事があってこうして呼び出した訳だが…とりあえず顔上げろ」
『えっ、あの…それは無理な話かと』
「あーん?」
『ごごっ…ごめんなさい。上げます、今上げますっ』
顔を上げた名無しを跡部は満足そうに目を細めながら見据えたあと本題に入った。
「お前最近よくテニス見に来てるみたいだが誰に興味あって来てんだ」
『はい?!』
「よく聞け名無しさん。お前みてえな地味眼鏡で今時珍しい程ド真面目で本ばっか読んでる大人しい女を生憎うちの部で相手する奴はまずいねぇ」
『そっ…そんな見も蓋もない…』
「そこでだ。お前がもし素直に誰に惚れちまって誰に会いに来てんのか教えてくれたらこの俺様が特別に協力してやらなくもねえぜ」
『素直にと言われましても…』
目の前の貴方なんですよとは流石に言えない名無しは眼鏡を指で押し上げたあと再び顔を俯けてしまった。
「チッ…素直に言えばいいだけなのに強情な雌猫だなお前は」
『な…なんですか雌猫って。私は猫じゃありませんよ』
「生意気に俺様に口答えかよ。まあいい…とりあえずお前そのダサ地味眼鏡取ってみろよ。それからそのダサい髪型もおろしてみろ」
『むっ…無理ですよ!私眼鏡ないと何も見えないし髪だって外したらバサバサだし』
「つべこべ言って俺様の貴重な時間削るんじゃねえよ。お前が自分でやらねえのなら俺様がやってやる」
『やめっ…本当に勘弁して下さい跡部君!』
名無しが制止するのも聞かず跡部は名無しの前に立ち眼鏡を取り払い髪の毛のゴムを外してしまった。
『返して下さいよ!』
「…やっぱ俺様の見込んだ通りだぜ。磨けば光る原石ってとこだな」
『なに言って…』
「おい名無しさん。俺様がお前の事いい女に仕立て上げてやるよ」
『えっ…い…いいですそんなの』
「遠慮すんな。ふん…現代のプリティーウーマンになれるなんざお前光栄に思った方がいいぞ」
何かを企むような跡部のその笑顔に名無しが何も言えなくなっている事をいい事に跡部は名無しの手を引き部室をあとにしていった。
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