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□花びらが舞う中で
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『幸村君、見てみて』
「ん?どうしたの名無し」
『ほら、桜が咲いてる。綺麗だね』
「あ、本当だ。綺麗だね」
学校からの帰り道、公園を通りがかった二人は満開に咲き誇る桜に目を奪われてしまい足を止めた。
『昼間の桜もいいけどこうしてライトアップされてるのも幻想的でいいかも』
「ふふ、そうだね。少し寄っていこうか?」
『いいの?』
「勿論」
幸村は笑みを浮かべ握られていた名無しの手を引き公園の中に足を踏み入れ近くにあったベンチに名無しを座らせ自分もその横に腰を下ろした。
『こんな事ならお菓子とかお弁当とか持ってくれば良かったなぁ。そしたらお花見っぽい事出来たのに』
「ふふ、名無しは本当に食いしん坊だね。花より団子って言葉は名無しの為にある言葉じゃないかな」
『あっ、失礼しちゃうなぁもう』
怒ってる素振りを見せているものの鈴を転がすようにコロコロと笑う名無しに幸村も微笑み返し名無しの顎に手を添えキスを落とした。
『ん…あ…幸村君?』
「今のは名無しが悪いよ。だってあんまりにも可愛く笑うから」
『そんな事言われても…』
「ねえ名無し。俺ね今こうして名無しと一緒に桜を見れてる事凄く嬉しいんだよ?勿論桜だけじゃなくて毎日当たり前のように一緒に帰って二人で笑い合ったり出来てる事もだけど」
一時は絶望的であったあの入院生活の事を思い出しながら幸村はひらひらと舞い落ちる桜の花びらをじっと見据えた。
「正直もう何もかもどうでもいいし色んな事を諦めてた。けど名無しが居てくれたから俺は頑張れたと思ってる」
『幸村君…』
「沢山君に八つ当たりして男の癖に泣いたりしたり格好悪い所ばかり見せてたのに名無しはそれでも俺の傍にいてくれた。だから俺ね、今こうして名無しと普通の恋人らしい事出来て本当に嬉しいんだよ」
『やっ…やだなもう。そんな事言われると泣けちゃうし泣いたら折角の綺麗な桜が霞んで見えなくなっちゃうからそういう事言うの止めてよ』
「クスッ…見えなくたっていいよ。名無しは俺だけ見てればいいの。それに桜なんかよりよっぽど名無しの方が綺麗だし」
『ふふ、もう幸村君ってばキザなんだから』
「名無し、顔上げてよ」
『だ…駄目。そう言われると何だか恥ずかしいし』
「いいから」
『あ』
幸村に顎を捉えられてしまった名無しは頬を赤く染め恥ずかしさのあまり目を瞑ってしまい幸村はそんな名無しを愛しそうに見つめながら顔を近付けていった。
『んんっ、幸村く…』
「ほら。もう少し口開いて…そうだよ。いい子だね名無し」
咥内で幸村の舌がにゅるにゅると自由に遊ぶように動き自分の舌を絡め取られたり吸われたりを繰り返され名無しは苦しいようでも気持ちの良いそのキスに時々吐息を洩らしながらトロンとした表情を浮かべていた。
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