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□雨が止むまで
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手塚は悩んでいた。
見事じゃんけんに勝利し、無事に名無しを誘う事に成功して今こうして遊園地に行こうと名無しの家の前まで迎えに来ていたがいざ家を目の前にするとインターフォンを鳴らすだけなのにやけに緊張してしまっているからだ。


「ま…まずいな。早くこれを押さないと名無しを待たせてしまう事になるがまさかこんなに緊張するとは…」


『じゃあお母さん行ってくるね』


「はい、いってらっしゃい」


「ななっ…」


手塚が悩んだ末インターフォンを押そうと手を伸ばした瞬間突然玄関から出てきた名無しと鉢合わせてしまい思わず手塚は赤面し固まってしまった。


『あ、手塚君おはよう』


「あっ…ああ、おはよう」


『ふふ、出てきて正解だったね。今来てくれた所だったんでしょう?』


「そそ…そうだ。丁度今来た所だったんだ。だからこうして名無しが出て来てくれて助かった」


『助かった?』


「いや、何でもない。それじゃあ行こうか」


『うん!』


何も疑う事なくそう満面の笑顔を浮かべる名無しに嘘を付いてしまった事に若干罪悪感を感じながらも手塚は制服ではない名無しの可愛らしい私服姿に胸の鼓動を高鳴らせながら隣を歩く名無しに目が釘付けになってしまった。


『ねえ、お化け屋敷楽しみだね』


「あ、ああそうだな。名無しは怖いのは平気なのか?」


『う〜ん…完全にとは言えないけど多分大丈夫だとは思う。けど耐えられなくなったら頼りにしてるからね手塚君』


「もっ…勿論だ。頼りにしてくれて構わない」


『あはは、頼もしいね』


遊園地に向かう電車の中でも歩いている時でもほぼ名無しから話し掛けてくる事に対して返事を返すだけとなってしまっている事に手塚はやや落ち込みながらも余程遊園地に行く事が嬉しいのか楽しそうに笑う名無しに誘って良かったと口元を少しだけ緩ませていた。


「ここみたいだな」


『わあ!凄い大きいね』


「ああ。それに人が多いな」


『これじゃあ迷子になっちゃいそうだね』


「なっ…なら!」


『ん?』


「てっ…手を俺と繋いでいればいい」


『え』


途端に頬を赤く染めた名無しにつられて手塚も顔を熱くさせてしまいそんな事を言ってしまった事に後悔をしていると名無しが恥ずかしそうに手を差し出してきたので手塚は目を見張ってしまった。


「名…名無し?」


『あ…あの…私本当に迷子になりやすいからだからその…手塚君がいいなら繋いでて欲しいな』


「いっ…いいに決まっている。そ…それじゃあ握るぞ」


『うう…うんっ』


手を繋ぐだけなのに何故かとてつもなく照れている二人に通り過ぎる客達がクスクスと笑いながらその様子を見ていたので手塚は思い切り名無しの手を握り締め歩き出した。




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