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□読書の秋よりスポーツの秋
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『ねえ国光。この本ってどう思う?』


「ああ。中々面白いと思うぞ」


『ふうん。あ、でもこっちも面白そうかも』


今日は部活も休みという事もあり手塚は名無しを誘い学校の図書室に来ていたが先程から手に取った本を手塚に見せては感想を聞き、次々と腕の中に本を重ねていく名無しを見ながら手塚は口元に笑みを浮かべよたよたと歩く名無しの手から本をさりげなく取り上げた。


『あ』


「こんなに持っていては歩きにくいだろう?俺が持っていってやる」


『…大丈夫なのに』


「何が大丈夫なんだ。ペンギンのようによたよたと歩いていた癖に」


『え〜、嘘!』


「嘘を吐いてどうする。本当の事だ」


『あっ、でもペンギン歩きの私も中々可愛かったでしょ?なんてね』


そう言って可笑しそうに笑う名無しに可愛いのはお前のその笑顔の方だと内心突っ込みながら手塚は頬を赤く染め机に大量の本を置き椅子に腰を下ろした。


『隣に座ってもいい?』


「あ、ああ。いいに決まっているだろう。駄目だという理由が見つからないからな」


『ふふ、ありがとう。う〜ん、何から読もう』


「お前はどんな話しが好きなんだ?」


『私はやっぱりおとぎ話やファンタジー系が好きかな』


「ならこれなんかいいんじゃないか」


『これ、面白そうだね。うん、早速読んでみる』


「ああ」


そうして本を読み始めた二人だったが思いの他気に入ったのか名無しは本に夢中になってしまったらしく黙々と目を走らせ、手塚は隣に名無しが居るという事とほのかに漂ってくる女の子らしい甘い匂いに気を取られ読書所の話ではなくなってしまっていた。


「…名無し」


『ん?』


「お前はその…何かつけていたりするのか」


『何かって何?』


「例えば香水だとかその類の物だ」


『ううん、何もつけてないよ。ふふ、やだ国光。私がそういうの嫌いだって知ってるでしょ?』


「…そうだったな」


『そういう国光も何かつけてるでしょ』


「俺がそういう物を好まないとお前は知っている筈だろ」


『え〜、嘘だよそれ。だってさっきからこんなに凄くいい匂いしてるのに』


手塚の胸元に思い切り顔を近付け匂いを嗅ぐ仕草をする名無しに手塚は煩い程に鳴り響く鼓動を誤魔化すように名無しから少しだけ体を離し眼鏡を指で持ち上げた。





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