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□捕まってもしたかった
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真選組で唯一の女隊士であり、そして二番隊隊長である名無しさん名無しは自身の組の局長近藤勲からとある命を受け、大変に腹立だしさを覚えながら江戸の町中を歩いていた。
腹立だしさを覚えてしまうのは仕方のない事だろう。
よりにもよってこの組の副長兼恋人の土方十四郎が騒ぎを起こしたあげく、市民から通報を受けてしまったのだから。
全く何をしているのだと更に苛々を募らせながら名無しはスナックの扉を開けた。

『こんばんは、お登勢さん』

「ああ、あんたかい。て事はあんたが今回の世話してくれるって事だね?」

『はい。本当にうちの副長がご迷惑をお掛けしてしまってすみませんでした。それで土方さんは?』

「あんたんとこの副長は今キャサリンに見張って貰ってるよ」

『そうですか。顔馴染みとはいえ事情を聞かなければならないので詳しいお話を聞かせて貰えますか』

名無しのその言葉に頷いたお登勢は煙草の煙を燻らせながら言葉を紡ぎ始めた。
事の発端は珍しく万事屋の主である坂田銀時と共にこの店に訪れた事から始まった。
二人の犬猿の仲は周知の事実だがお登勢はまあそんな事もあるだろうと特に気にする事なく酒を二人に出していたのはいいが、何がきっかけだったのかはよく思い出せないがその“何か”が原因で突然土方が怒り出し、あろう事か銀時を思い切り殴り付けたらしい。
ここまで黙って話を聞いていた名無しはメモ帳の上で動かしていたペンを止め、お登勢に視線を向けた。

『こんな事を言ってはなんなのですがそれっていつもの事ですよね?それで通報なんていつも以上に酷かったって事ですか?』

「…まあね」

『お登勢さんにしては珍しく歯切れが悪いですね』

「そりゃそうさね。ここじゃ殴り合いなんて日常茶飯事だけどさっきのはその日常茶飯事以上の喧嘩だったんだから仕方ないだろう?」

『ああ、まあそうですよね。それじゃあ後は本人から話を聞くので土方さんをここに連れて来て貰ってもいいですか?』

「お…お登勢さん!大変デス!」

「どうかしたかいキャサリン」

「私がトイレ行ってる隙に逃げられまシタ!あの粗○ン野郎っ…絶対許せナイっ。だから粗チ○になるんダヨッ」

『ちょ…粗○ン粗チ○連呼しないで下さいよ!』

突っ込むべき所も今重要な部分もそこではないだろうとお登勢は内心冷静に突っ込みながら思い切り溜め息を吐き出したあとキャサリンに視線を向けた。 

「…裏口から逃げられたのかい?」

「そうデス」

「それじゃああとはお上の仕事なんだからあたし達が介入するとこじゃないね。頼んだよ名無し」

『は、はい!』

名無しはお登勢に軽く頭を下げ慌ただしく土方が逃げていったという裏口に駆けていってしまい、残された二人は扉が閉まる音をその耳で確認したあと顔を見合わせ合いにっと悪戯な笑みを浮かべていた。





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