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□クリスマスを君と
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「おはようさん名無し」

『おはよう侑士!』

「ん?どないしたん名無し。めっちゃ髪乱れとんで」

『えっ、嘘!』

「嘘吐いてどないすんねん。ちょお大人しくしとってや」

『う…うん』

優しく目を細めながら名無しの髪の毛に手を伸ばし、跳ねてしまっている髪を整えてやったあと忍足は満足そうに頷きながら笑みを浮かべた。

「上出来や。可愛ええで名無し」

『そうかな』

「ああ、めっちゃ可愛ええ。こない可愛ええ子をクリスマスに独占出来るなんて贅沢やわ俺」

『ふふ、そんなに可愛い可愛い言われたら照れちゃうよ。そういう侑士こそすっごく格好良いよ?私もクリスマスにこんなに素敵な人を独占出来て贅沢過ぎるかも』

「くっ…また姫さんはそない可愛ええ事言うて…そないあかん子はこうや!」

『きゃっ…!ゆ、侑士苦しいよ』

名無しを思い切り抱き締めた忍足は、自分の胸を軽くとんとんと叩く名無しに更に鼓動を高鳴らせ頬を熱くさせてしまった。
本当にいちいち可愛いのだこの名無しさん名無しという少女は。
こう言っては何だが最初こそちんちくりんで特に面白味のない名無しに興味を抱いてはいなかったが、同じ保健委員になって少しずつ話すようになって話し方だとか笑い方だとか1つ1つの動作が可愛いと気付いてしまった。
気付いてしまったからにはどうしようもなくその日から名無しを目で追うようになってしまい、攻めずにいるのは自分の性分ではないと思い切って告白をしたのだ。
そうしたら名無しも自分と同じ気持ちでいてくれたと知り晴れて付き合うようになったのだが、付き合ってから更に名無しの可愛さが堪らなくなってしまいとにかく場所問わずこうしてつい抱き締めてしまう癖が出来てしまった。
まあテニス部部員達には流石に冷たい目で見られてしまっているが。

「ん〜、名無しは今日もええ匂いでええ具合に柔らかいなぁ」

『は…離してってばもう…』

「ああこらすまん。ついいつもん癖で。で、今日は何処に行きたいんや?クリスマスやし何処にでも付き合うで」

『あのね、侑士のプレゼント買いに行きたいの。本当はサプライズで渡したかったんだけどいまいち侑士の好み分からなかったから…』

「や、ちゃうで名無し。サプライズなんかどうでもええんや。名無しのそん気持ちが嬉しいんやし。ちゅうか気ぃつこてくれてありがとな」

『気なんか使ってないよ?だってほら、私はいつも侑士にして貰ってばかりで何もしてないから…だからこういう時にこそ私も侑士に何か出来たらなと思って』

そう言って長い睫毛を伏せてしまった名無しに忍足は困ったように笑いながら名無しの冷たくなってしまった手を取り握り締めた。

「めっちゃ手ぇ冷たいやん」

『え?う、うん。あの、慌てちゃってたから手袋忘れちゃって』

「なら今日は俺が名無しの手袋の代わりしたる。ほれ、こうすれば暖かいやろ?」

『あ…あの…うん』

「なあ名無し。俺にプレゼントくれるつもりなんやろ?」

『勿論そのつもりだけど…』

「そうかそうか。じゃあ今日1日は俺ん言う事何でも聞いてくれるっちゅうのがプレゼントって事でどや」

『それでいいの?』

「それがええんや」

『…いいけど』

「決まりやな。ほなら行こか」

不敵な笑みを見せたあと名無しの手を自らのポケットに入れ、歩き出した忍足を名無しは不安気な表情を浮かべながら眺めていた。
何でも聞くとは言ったがあまりに無理難題を言われてしまったらと穏やかな心境ではいられなかったが、いつも自分に優しくしてくれる忍足の為ならばと思い名無しは自分と同様にポケットの中に入れられている忍足の大きな手をきゅっと握り締めた。







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