番外編
□お年頃は大変なんです
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俺は青春学園テニス部部長の手塚国光だ。部員達は勿論の事学校内で何故だか俺は近寄りがたい人やら取っ付きにくい人やらと言われているらしいが俺だってわざとそうしている訳ではないのでそればかりは仕方がない。
この仏頂面と不器用さは幼い頃からのものなので今更変えられるものでもないからな。
しかし…しかしだ。
こんな俺にもどうやら春が来たらしく最近部のマネージャーになった“名無し名無しさん”という1人の少女が気になって気になって仕方がない。俺が言うのもなんだが名無しさんは可愛いらしいんだ。
見た目もさることながら性格がもう…な。いちいち俺の所謂萌えポイントに引っ掛かる言動や仕草をしてくるから堪らない。
こんな事を部の奴らに言ったら確実にあいつらは俺の事を馬鹿にすると分かっているのであえてそれを口にはせずポーカーフェイスを取り繕っているが心の中では密かにその可愛さに悶えている。
今日も無事に授業が終わり今部室に向かっている訳だが名無しさんに早く会いたいという気持ちが抑えられなくなってしまい自然と足が早くなってしまう。
もう彼女は部室に来ているだろうか。
俺が息を吐き出しながら部室のドアノブに手を掛け回そうとしたが中からとんでもない言葉が聞こえてきたので俺は思わず固まってしまった。
『やっ…止めて下さ…も…もう無理です!』
「だ〜め。名無しさんだって早く慣れたいでしょ?」
『え…英二先輩わた…私もうっ…』
「そっ…そんな顔したって駄目だにゃ!今日は許さないからね」
ななっ…何をしているんだ菊丸はっ!
俺の名無しさんに一体何を…
「ねえ先輩。もう面倒臭いし抑え込んじゃったらいいんじゃないすか?」
「うん、それいい考えかもね。英二」
「え〜!俺流石にそこまで出来ないよ」
「なら海堂。君に任せるよ」
「フシュゥゥ…了解っす。どいて下さい先輩」
「ほいほ〜い」
な…なんなんだこの怪しげな会話はっ。
抑え込む?任せる?まさかこいつらこの中で名無しさんを…?!いや、あいつらに限ってそれはないだろう。しかしこれを放っておいていいものかどうか。
俺が頭を抱え込みながら考えていると名無しさんの悲鳴が上がったので俺ははっとし再びドアの向こうに耳を澄ませた。
『ほっ…本当に無理なの。おねがっ…止めて薫く…ヒクッ』
「なっ…泣くんじゃねえっ。俺だってこんな事はしたくねえが全部お前の為だろうが」
『わか…分かってるけど…ううっ』
「名無しさん、君が皆に頼んだんでしょ?なのにそんな我が儘言ったら駄目だよ」
『そ…だけど…こんなの耐えられないっ…!』
こんなのってどんなのだ名無しさん!
まさか本当に名無しさんは襲われているのか?ならばここは格好良く俺が助けるべき所じゃないのか?!
俺はぐっと拳を握り締めたあとノブを思い切り回し部室の中へ足を踏み入れた。
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