君を愛し続ける

□仲直りは言い合いで
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「名無しさん」


『なに?』


「その本いい加減飽きたろ。今度はこれ読んでみるか?」


『…私洋書なんて読めないんだけど』 

 
「クックッ…そんなん知ってるぜ。ただからかってやりたくなっただけだ」


『ああ、そうですか。すみませんねあなたの妻は知識が乏しくて』


自室のソファで跡部の肩に頭を寄せながら本を読んでいた名無しさんはからかうような悪戯な笑みを浮かべる跡部から少し離れ再び本に視線を落とした。


「おい。誰が俺様から離れていいと言った」


『景吾が意地悪言うからでしょ』


「言ってねえだろ。いいからこっちに来いよ」


『いや』


「名無しさん」


『やだってば』


「…本気か?まさか俺様の事嫌いになったとか言うんじゃねえだろうな」


『そんな事…って景吾。なんて顔してるのよ』

 
忍足の元から帰ってきてから数日。
跡部とも以前と変わらない生活に戻った筈だったのだが余程先日の件が跡部にとって堪えたのか時折こうして名無しさんが冗談で言った事でさえも不安そうな表情を浮かべるようになってしまったので名無しさんは申し訳なさで一杯になりながらも苦笑してしまった。


「なに笑ってんだよ」


『笑ってなんかないけど…景吾も可愛い所あるなぁと思って』


「可愛いだと?この俺様を可愛い扱いするなんざいい度胸してんじゃねえか名無しさん」
   

『景吾』
 
  
「あーん?」
 
 
『はい、どうぞ』
  

「…なんのつもりだそれは」


『なんのつもりって言われても…よしよしして欲しいんじゃないの?』


両手を広げ花が綻ぶような笑みを浮かべながら悪気も恥ずかし気もなくそう言い首を傾げる名無しさんに跡部は頬を赤く染めてしまったものの大人しく名無しさんの腰に腕を回し首筋に顔を埋めた。


『よしよ〜し。いい子ですねぇ景吾は』


「止めろ。俺様はガキか」


『私から見たら景吾は子供だよ』
 

「ほう…だが子供にこんな事は出来ねえだろ?」   


『んっ…あ!ちょっと…』
  

名無しさんの首筋に啄むようなキスを落としたり舌を這わせたりする跡部を抑えるように名無しさんは跡部の頭ごと更に強く抱き締めた。


「なんだよ。抑え込まなくたってこっちも弄ってやるから安心しろ」


『やっ…そういう意味じゃなくて…も!胸触らないでよっ』   


「何言ってんだお前。触って欲しいから俺様の顔をここに抑え込んだんだろ?」


『ちち…違うからっ』


「ハッ…俺様を可愛いだの子供だの言った罰だぜ。ありがたく受け取ったらどうなんだ」


『そんなのありがたがれません!!』


漸く胸元から跡部を離す事が出来た名無しさんは赤くなってしまった顔を冷ますようにパタパタと手で扇いでから面白いといった風に笑う跡部に視線を向けた。



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