彼女の愛で方
□Lesson1
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無事に青春学園へ辿り着いた名無しは校舎内へ入り職員室へと向かっていた。
『...職員室ってこっちであってるかな。誰かに聞いて...だ...駄目駄目!初対面の人に声を掛けるなんて高度な事私には出来ないよ』
こみ上がってきてしまう涙を溢さないようにぐっと堪えながら名無しが再び歩き出そうとすると後ろから声を掛けられたので名無しは思わず肩を跳ね上がらせてしまった。
『だだっ...誰ですか?!』
「す...すまない。そんなに驚くとは思わなかった」
『あ...あの。私に何か...?』
「君が困ってるように見えたから声を掛けたんだがどうかしたか」
金の髪色をした眼鏡を掛けた少年にそう聞かれたので名無しは胸をバクバクとさせながらも恐る恐る少年を見上げながら呟いた。
『あ...あの...私、今日転校してきたんですけど職員室はこっちであってるのかどうか心配になってしまって』
「そうだったのか。なら案内しよう」
『え...でも』
「俺も丁度職員室に用があるんだ」
『そっ...そうですか?!それじゃああの...お願いします』
顔を赤く染めながら頭を下げる名無しに少年は口元に笑みを浮かべ名無しの頭を撫でた。
『ああ...あのっ?!』
「すっ...すまない!」
潤んだ瞳で名無しに見つめられてしまった少年も釣られるように顔を赤く染めながら口元を手で覆った。
「な...何故かは分からないが君のその顔は癖になる顔だな」
『え...?』
「いやっ、何でもない。案内するから付いてきて欲しい」
『...よろしくお願いします』
名無しのその言葉に頷いてみせた少年は時折名無しをちらちらと見下ろしながら職員室に向かって歩き出した。
「それにしてもこんな時期に転校だなんて珍しいな」
『はっ、はい!あの...父の仕事の転勤で...その...引っ越してきました』
「そうだったのか...ところで」
『はは...はい!』
「...」
『あの...』
「ふ...くくっ...」
『なっ何でしょうか』
突然笑いだした少年を名無しが戸惑いながら見つめていると漸く笑いが治まってきたのか少年はゆっくりと息を吐いた後笑みを浮かべてみせた。
「そんなにビクビクとされてしまうとこっちが悪い事してる気になると思ってな。そんなに俺が怖いか?」
『ちがっ...違います!あの、私とても人見知りで初めて会う方だとどうしてもこうなってしまうというか...』
「成る程な。通りであんな所で体を震わせてぽつんと一人で立ってた訳だ」
『そっ...そう見えてましたか...?』
「ああ。まるで捨てられた仔犬みたいだったから見捨てておけず思わず声を掛けてしまった」
『仔犬って...』
「名前を聞いてもいいか」
『え?』
「君の名前を知りたいのだが俺に教えてはくれないか?」
優しい眼差しで自分を見つめる少年に名無しも少しだけ笑みを浮かべ恥ずかしそうに頷いた。
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