彼女の愛で方
□Lesson3
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「名無しさん」
『は...はい』
「お前にとって酷な事だろうが言って置かなければいけない事がある」
名無しがマネージャーになってから数週間も経たないある日顧問の竜崎の立ち会いの元で部長、副部長、マネージャーである名無しの4人でのミーティングが行われており手塚のその一言に名無しは唾を飲み込みながら手塚を見据えた。
『そ...そんなに深刻なお話なんですか...?』
「...ああ」
「これ手塚。そんなに名無しさんを怖がらせるような言い方をしなくてもいいじゃないか。たかだか地区大会で...」
『ちちっ...地区大会ですか?!そそ...そんな...』
「落ち着くんだ名無しさん」
『おっ...大石先輩でで...でも』
顔面蒼白になる名無しを落ち着かせるように手塚は名無しの頭を撫でながら小さく溜め息を吐き出した。
「名無しさん。どちらにせよマネージャーになったからには練習試合や地区大会は避けられないんだ」
『...はい』
「俺達もなるべくお前の傍にいるようにするからそんな顔をするな。それにいい奴らばかりだし安心するといい」
「まあ個性的で少し強面な奴らばかりだけどね」
『ええ?!』
「「竜崎先生!」」
名無しが何故そこまで怯えるのか瞬時に理解した竜崎がからかうようにそう告げながら笑ってみせると珍しく手塚と大石は声を荒げ竜崎を見据えた。
「お〜怖い怖い」
「折角名無しさんが安心したのにそんな事言わないでやって下さい先生」
「そうですよ!見て下さい、また名無しさんの顔が真っ青になってるじゃないですかっ」
「ふふ、いやすまないね。歳をとるとどうにもからかってやりたくなってね」
「全く...」
未だ笑う竜崎に呆れたような溜め息を吐き出した手塚は1枚のプリントを名無しに手渡した。
「ここに載っている学校が大会の相手だ」
『不動峰中、氷帝学園中、聖ルドルフ...こっ...こんなに...?』
「名っ...名無しさん気を確かに持って!」
目眩を覚えた名無しは額を抑えながらくらりとしてしまったものの大石のその声にはっとし何とか気を保った。
『決まっているものは仕方ないですよね。わ...私どこまでお力になれるか分かりませんが頑張ります!』
「偉いぞ名無しさん。その調子で大会まで油断せずにいこう」
「頑張ろうね名無しさん」
『はっ、はい!』
「少しオーバーじゃないかい?お前さん達」
名無しを囲むように声援を送る二人に竜崎はやれやれといった風に首を横に振った。
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