彼女の愛で方
□Lesson6
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「全員集合!」
「「「はい!」」」
朝練終了の合図に青学部員達は手塚と竜崎が待つベンチまで走っていった。
「皆、この間はご苦労だったね。だがまだ大会は終わった訳じゃないんだから気を抜かずしっかりと練習に励みなよ。それから名無しさん」
「名無しさん?居ないのか」
「フシュゥゥ...そういやさっきから姿見えないっすね」
「まっ...まさか誘拐かにゃ?!」
「そんな事ある訳ないだろう英二」
ざわざわと騒がしくなる中洗濯場から籠を持ちながら姿を現した名無しに部員達は胸を撫で下ろしたものの思わず苦笑してしまった。
「なんだよ名無しさんの奴。あんなとこに居たのかよ」
「ていうかマイペース過ぎるでしょ名無し」
「ふふ、全く相変わらずというかなんというか」
「こぉれ名無しさん!」
『ひゃい!?』
「とっくに部活は終了しとるんだからさっさとこっちに来な!」
『すす...すみません!』
竜崎に怒鳴られてしまった名無しは慌てて籠を置き駆け出そうとするが籠に足を躓かせ思い切り転んでしまった。
「名っ...名無しちゃん?!」
「なんてお約束な奴なんだ名無しさんは」
「い...乾先輩っ...ククッ...それを言っちゃいけね〜な〜、いけね〜よ」
「ププッ...まだまだ過ぎるよ名無し」
「何やってるんだいあの子は全く」
竜崎がやれやれといった風に額に手をあてているといつの間にか不二が名無しの元に駆け付けており起き上がらせていた。
「大丈夫?名無し」
『だ...大丈夫。ありがと周ちゃん』
「擦りむいちゃってるね。痛そうだ」
『全然痛くないよ。それにほら、きちんと絆創膏もちあるいてるしこれ貼っておけば大丈夫だから』
「ふふ、流石名無し。きちんと準備してるなんて偉い偉い」
不二は名無しの頭を撫でた後そのまま手を引き部員達の元に戻っていった。
『遅れてすみません竜崎先生』
「いいよ。名無しさんがどういう子なのかよ〜く分かったからね」
『はい?』
「いや、何でもないさ。それより名無しさん」
『なんでしょうか』
「お前さんに放課後おつかいを頼みたいんだが」
『おつかい...ですか?』
竜崎は頷いた後手に持っていた茶封筒を名無しに差し出した。
「それを氷帝学園のテニス部顧問の榊監督に持っていっておくれ」
「「「ひょ...氷帝?!」」」
「「「駄目ですよそんなの!」」」
「な...なんだいお前さん達」
「先生知らないんすか?!氷帝学園はただでさえ変態集団の集まりなのにそんな所に名無しさんを一人で行かせるなんて」
「そうだにゃ〜!可愛い可愛い名無しちゃんをそんな所に行かせるだにゃんて先生は鬼だにゃ」
断固反対の意見が飛ぶ中竜崎は大きな溜め息を吐き出した後手塚に視線を向けた。
「手塚...皆に何か言ってくれないかい?」
「先生。申し訳ないのですが俺も反対です。あんな所に名無しさんを行かせたら無事に帰って来れるとは思いません」
「お前さんもかい...」
目眩が起きそうなのを何とか抑えた竜崎は気丈を保ちつつ強制的にその話を終了させ解散の号令をかけた。
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