蜜より甘く
□scene5
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ここは江戸かぶき町にあるファミリーレストラン。ファミリーと付くだけあって家族連れが多く子供の声や大人の笑い声で賑わう店内の一角にある1つのテーブルでは周りに浮いて見える程やけに重苦しい…否、冷たい空気が流れていた。
「す…すみません姉上」
「ふふ、あら新ちゃん。突然なに?」
「いえあの…時間に少々遅れてしまったので…」
「少々じゃねえだろうがこらぁぁぁ!お前タイムイズマネーって言葉知らねえのか、ああん?!時は金なりなんだよ!無駄な時間過ごさせんじゃねぇぇぇ!!」
「ひっ…ひぃぃ!すみませんっ、すみません!」
「おいおい。あんま怒っと口から空気抜けて元々ねぇ胸更にしぼんじまうぞ」
「んだとこらぁぁぁぁ!胸関係ねえだろうがぁぁぁぁ!!」
『ちょっ…ちょっとちょっとお姉さん。少し落ち着きましょうよ。折角の綺麗な顔が台無しになっちゃいますよ』
「綺麗だなんてそんな…ってあら?というか貴女は誰かしら」
漸く冷静さを取り戻した新八の姉は首を傾げながら名無し子を見つめてきたので名無し子も笑みを浮かべ女性を見つめ返した。成る程、確かにこうして並んでみると確かに新八とこの女性は顔立ちがよく似ている。が、しかし同じ姉弟でもこうも性格が違うものかと名無し子は別の意味で感心してしまっていた。
『私は吉田名無し子っていうの。よかったら貴女の名前も教えて貰ってもいいかしら』
「私は志村妙っていうの。ええと…名無し子さんって呼んだ方が?」
『ああ、そんなにかしこまらなくて大丈夫。私あんまりそういうの好きじゃないしもっと普通でいいよ、お妙ちゃん』
「ふふ、なら私も名無し子ちゃんって呼ばせて貰おうかしら」
『勿論。因みに簡単に説明しちゃうと私は銀ちゃんと所謂幼馴染みって奴なの。だから決して怪しい者じゃないから安心してね』
「あらそうなの。こんな適当人間で死んだ魚の目をした子供のお手本にも出来ないろくでもない男にこんなに綺麗な幼馴染みがいるなんて驚いちゃったわ」
「おめぇな。さらりとさりげなく酷い事言ってくれちゃってるけど銀さんが傷付かないと思ったら大間違いだかんな」
納得いかないという風な表情をする銀時に妙はその通りでしょとにっこり微笑んでみせたあと残り3人に視線を戻した。
「早速本題に入るけれどとにかく私の依頼内容を聞いてくれないかしら」
「姉御の為ならなんだって聞くアルよ!」
「僕も神楽ちゃんと同じ意見です。話して頂けませんか?」
「ええ。実はね、うちのお店でちょっと困った事になっていて」
妙の話は要約するとこういう事だ。
妙が勤めるスナックで今柄の悪い連中達がほぼ毎日来店して営業妨害だとしか思えない振る舞いをしキャストや他の客が怯えてしまい客足が遠退いてる上キャストも休みがちになり店の経営が怪しい状態になっている。どうやらその柄の悪い連中達は最近スナック“すまいる”の近くにオープンしたキャバクラのオーナーが雇ったチンピラで自分の店に客を呼び寄せたいが為にすまいるだけではなく他のキャバクラやスナックにもチンピラを派遣させているらしく大変困っているのでどうにかして欲しい、そういう内容だった。
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