蜜より甘く

□scene9
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「暇アル」

「暇ですね」

「暇だな」

ここは万事屋。
まだ日が高々と昇る真っ昼間なのだが今日は依頼無しという恐ろしい事態となっており名無し子除く3人はそれぞれ暇を潰しながら先程からそんな事を呟いており流石に見かねた名無し子は困ったように笑いながら銀時が座るソファに腰を下ろした。

『ねえ皆。まだまだ1日長いんだから暇だなんて決め付けちゃ駄目じゃない』

「つってもなぁ。こうも朝から暇だと今日1日は駄目な気がすんだよな銀さんは」

『それって万事屋の社長の勘?』

「お〜、まあな」

『仕事がなさそうなら探しに行けばいいじゃない』

「そうは言っても名無し子さん。そこら辺にゴロゴロと依頼が落ちている訳じゃありませんしそれは難しいですよ」

『そうかな。そんなのやってみなくちゃ分からないでしょ?』

名無し子がそう言いながら新八に微笑んでみせるとソファから立ち上がり定春にリードを付け始めたので3人は首を傾げてしまった。

「定春の散歩に行くアルか?」

『そう。散歩ついでにちょっと仕事探ししてくる』

「おいおい名無し子〜。無駄な事は止めて銀さんといちゃいちゃして過ごそうぜ、な?可愛がってやるからちょっとこっち来いって」

「アホですかあんたは!」

「名無し子にセクハラするなんて許せないアル!」

新八と神楽の二人に頭をすぱんと叩かれてしまった銀時は頭を擦りながら二人を睨み付け、そんな二人に名無し子はやれやれという風に首を横に振るい定春を連れ静かに万事屋をあとにしていった。

『定春〜。何か困ってる人の匂い嗅ぎ付けられない?』

「クウ〜ン」

『あはは、嘘だよ嘘。だからそんな悲しそうな顔しないで、ね?』

「ワンワン!」

『ふふ、やだ定春。くすぐったいからそんなに舐めないでよ』

「まさに美女と野獣って感じですねい名無し子」

『え』


突然聞き覚えのある声が聞こえたので名無し子が後ろを振り返るとそこにはパトカーの中から顔を覗かせ手を振る沖田とその横で何故か頬を赤く染めながらぶっきらぼうながらに片手を上げる土方の姿があったので名無し子は定春を連れパトカーに駆け寄っていった。

『総悟とトシ久し振りだね。元気にしてた?』

「見ての通りピンピンしてまさぁ」

「つうかお前よぉ…あんな可愛い顔そこらの男に見せてやってんじゃねえぞこら。変なの寄ってくんだろが」

『ちょっと。トシってば何でそんなに不機嫌になってるのよ』

「ククッ…土方さんの事なんて気にしなくていいですぜい。これは単なる醜い焼き餅って奴ですからねい」

「ちょっ…違うから!焼き餅じゃないから!!断じて違うからねぇぇぇぇ?!」

『うっわ…相変わらず声が大きいねトシ』

「名無し子」

『ん?なに?』

沖田はちょいちょいと名無し子にもう少し顔を近付けるよう促し名無し子も顔を沖田に近付けるとそのまま頬に触れるだけのキスを落とされてしまい名無し子が勢いよく沖田から顔を離すと今度は腕を掴まれてしまった。

『ちょっと総悟!』

「なあ名無し子。今からあんたを軟派してもいいですかい」

『はい?』

怪訝な顔を見せる名無し子に沖田はにっと口端を上げてみせ車に乗るように促した。

「おい総悟。お前まさか…」

「そのまさかでさぁ。それに名無し子は仮にも万事屋なんですから頼んでも問題はないと思いますぜい」

『ねえちょっと。何の話してるの?』

「まあまあ。それは真選組でゆっくりと…」

『ああ、もしかして依頼?それなら万事屋でお願いしてもいいかしら。それに定春の事置いてはいけないしね』

「…それもそうですねい。ならあとで万事屋で会いやしょう」

走り去るパトカーを見送りながら名無し子はにっと口端を上げ定春の頭をよしよしと撫で始めた。

『うん、やっぱり外に出てきて正解だったね定春!早く万事屋に帰ろうか』







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